第2話 ◇夫の異変
私が夫
かなり以前から親密にしているようだと、同じ医局の先輩後輩たちからチラホラ
耳にするようになっていた。
私、英、影木景子は同業で医師だ。
そして影木景子は科は違うが私たちの先輩になる。
聞くところによると、最近では隠すことなく同僚たちの
目の前で堂々とLove A Fairを繰り広げているらしい。
もうそれは周知の事実になっていた。
最後に知ったのが私? ってこと。
あ~あ、だ。
開き直って私の耳に入れたくて、わざと大っぴらに彼らは付き合って
いるのだなと……鈍い私にも分かった。
なかなか、気付かない私に、さぞかし彼らは焦れたことだろう。
夫は家であからさまに私のことを避けたり罵倒したりはしない。
表向きは今まで通りのやさしい(振りなのか?)夫でいるが、7年付き合い
4年の結婚生活を一緒に過ごした私には、分かっていた。
もう、夫が全く私に興味を失くしていることを……。
夫の様子や職場の人たちからの情報から状況判断するに、
夫が彼女にのぼせていて、追いかけているようだ。
何度も夫が景子にアプローチかけて振り向かせたということを知った時、
私は『まだ夫を愛している一緒にこの先もいたい』という自分の望みを
手放そうと決心した。
本当に夫のことを好きだったので、彼の邪魔はしたくないという
純粋な気持ちから。
ここまで気持ちを固めて夫からの言葉を待っていたけれど
夫は何も私には言ってこなかった。
だから私はある日、彼に言った。
-
「私たちどうしようか? 」
「えっ? 」
「知ってるよ、あなたが景子さんと付き合ってること。
彼女に本気だってことも」
「離婚は考えてなかった……かな」ボソッ
「今までさんざん君や君の父上に世話になっていてそれはできないし、
そんなことをしたら君の父上に合わせる顔がないっていうか……」
なんだかんだとブツブツ言うばかりの夫。
そんな夫が更に私の予想も付かない斜め上からの台詞を吐いた。
「もう少し待って欲しい。
その内気持ちも落ち着いて……その、つまり……君に戻ると思うから。
離婚話持ち出したりして早まるな」
はぁ~!
驚き桃の木山椒の木 、この男の頭の中はどうなってるのだろう。
女とは別れるから離婚話はしないでほしいならまだ分かるが……。
「好きなんでしょ?
影木さんと結婚したくないの? 」
「彼女は結婚に拘るような平凡な女性じゃないよ」
-
そっか、平凡な女で悪ぅ~ござんしたねっと。
この酷い言い草に、目の前の男は私の好きだった夫から
気持ちの悪い生きものの塊へと、大きくシフトした。
どういうつもりで生きているのか理解できない人間になってしまった
夫は数日後、早々と自分の意見を覆し……いろいろ考えたんだが、このままの
状況は君に失礼だから離婚してほしいと申し出てきた。
自分から離婚を言い出せずにいたヘタレ
出たものだから、ああは言ったものの、これ幸いと私の言葉に乗っかったのだろう。
言い訳が、君に失礼だから……だった。
ほんとに何もかも今の状況を作ったあなたは最大に失礼なんだよ?
失礼、失礼と言いつつ、失礼な言動をする人間。
未練をすっきり断ち切ってくれたよねぇ~。
私は慰謝料もそして養育費さえ受け取らないと決め、離婚に応じた。
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