第13話 珍客

いつものナイトジャズバー「エクワイア」の普通に戻った。

店は、夕方の7時にオープンする。電光の看板の明かりがともり、一日の楼蘭での仕事を終えた客たちが集まってくる。

工場の女どもが店先で、煙草を吸って喋っている。目の前のストリートでは、ダンスを披露するパホーマ―や、ボールを操る大道芸人がいる。黒い車が走り去り、ラクダや馬が、ロブ・ノール湖を目指して通過する。風が吹いている夏の夜の街。


やがて、雨が降り出してきて、赤やブルーや黒やブラウンのレインコートを着た人々が目立つようになった。空は雷鳴が鳴り響く。湿気が楼蘭を、より、熱くさせた。


店内は荒くれどものパーティーだ。スポットライトを浴びたジャズバンドの演奏が鳴り響き、従業員のHも、ジョンも、バーテンダーのトムも、ウェイトレスのシンディーも、忙しく青色の深海を思わせる店内を動き回る。Hは、一息入れたくなった。


そこへ、扉が開く。雨の中をやって来た一人の男、Hは、見た感じレゲエであると思う。レゲエは、腰まで伸びたよく編み込まれたドレッドヘアの頭に、髭を蓄えた顔をよれよれのジーンズをはき、黒い革ジャンに黄色にコンセントがプリントされたTシャツを着ている。Hは、「いらっしゃいませ。」と応じると、レゲエは、酒臭い息をHに吐きかけて言う。

「俺は、はるばるジャマイカから来たレゲエミュージシャンのコールマンだ。俺をここのステージでやらせてくれ。」

Hは、コールマンと名乗るレゲエに言う。

「少々お待ちください。オーナーのミセス・ジェリーに伝えます。」

コールマンは、入り口に立ちんぼしている。Hは、思う。

「ジャズバーで、レゲエ音楽は、面白いかもしれない。」

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