異世界に転生したけど、チートがなくても知識で無双できるって気づいた件

katura

転生の瞬間

 眩しい光が視界を覆った。

 次の瞬間、冷たい土の感触が背中に広がる。ゆっくりと目を開けると、そこには見知らぬ青空が広がっていた。


「……え?」


 目の前にそびえるのは、見たこともないほど巨大な樹木。陽光が葉の隙間からこぼれ、柔らかな風が頬を撫でる。耳を澄ませば、小鳥のさえずりと、小川のせせらぎが聞こえてきた。


 状況を整理しようと、ゆっくりと身を起こす。だが、どこを見回しても、周囲には人工物のひとつも見当たらない。


「いや、ちょっと待て。ここ、どこだ……?」


 頭を抱えながら、記憶をたどる。


 たしか、俺は——夜遅くまで勉強していて、コンビニに行こうとした帰り道……。

 そこから、どうなった?道を渡ろうとして——


 ——眩しい光。


 ——衝撃。


 ——暗転。


 ……そこで、意識が途切れていた。


「まさか……異世界転生?」


 自分の口から出た言葉に、思わず苦笑する。そんな馬鹿げたことがあるわけ——いや、でも、今の状況を説明できる理屈が他にあるか?


 明らかに日本ではない大自然。身につけている服も、いつものジャージやジーンズではなく、見慣れない布のチュニックとズボンになっている。


 試しにポケットを探るが、スマホも財布もない。


「マジかよ……」


 額を押さえ、深く息をつく。もしこれが本当に異世界転生だとしたら……?


 そんな考えが頭をよぎったとき——ふと、ある可能性に気づく。


「……もしかして、俺にもチートスキルが?」


 異世界転生といえば、最強スキルや勇者の力が与えられるのがお決まりのパターンだ。ならば、俺にも何か特別な力が——。


 直感的に、「ステータス確認」という概念を思い浮かべる。


 すると、まるで頭の中に情報が直接流れ込んでくるように、視界の端に淡い光のウィンドウが浮かび上がった。


 ——ステータス画面。


「……おお、やっぱりあるのか!」


 興奮しながら、詳細を確認する。そこに表示されたのは——


【名前】藤崎悠斗

【職業】なし

【レベル】1

【HP】100/100

【MP】10/10

【筋力】C

【敏捷】C

【知力】B

【魔力】D

【スキル】鑑定(Lv.1)


「……え?」


 一瞬、目を疑った。


「鑑定(Lv.1)……だけ?」


 不吉な予感が胸をよぎる。慌ててスキルの詳細を開く。


【鑑定(Lv.1)】対象の基本情報を確認できる。レベルが低いため、詳細な情報は取得不可。


「……いやいやいや、待て待て待て。」


 俺は慎重に他のステータスを見直す。


 筋力、C。敏捷、C。……つまり、平均。

 知力、B。ちょっとだけ高いが、別にチートレベルではない。

 魔力、D。これ、つまりほとんど魔法が使えませんってことだよな?


「ふざけんな!!」


 俺の叫びが、静かな森に虚しく響いた。


 異世界転生したのに、スキルが『鑑定(Lv.1)』だけ?ステータスも、ほぼ一般人レベル?


 普通、異世界転生って言ったら、『最強魔法』とか『無限スキルポイント』とか『レベル999』とかがあるんじゃないのか!?


「いやいや、チートどころか……俺、これ……ただの凡人じゃん……?」


 がっくりと肩を落とし、地面に座り込む。


 とんでもない事実に気づいてしまった。


「……俺、これからどうやって生きていけばいいんだ?」


 異世界転生、まさかの “ハードモード” でスタート。

 生き延びる方法を考えなければ——そう思いながら、俺は静かに空を見上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る