第5話 裏切りと別れ

 アトラスを襲撃したアーク・エネルギー社のドローン群は、一度は撃退された。しかし、それは本当の攻撃ではなく、ただの陽動に過ぎなかった。


 その夜——ルナは姿を消した。


 「ルナがいない!?」


 ソラが飛び起きた時には、すでに彼女の姿はどこにもなかった。


監視カメラを確認すると、そこには驚くべき光景が映っていた。


 ——ルナが、自らアーク・エネルギー社のエージェントと共に飛行機に乗り込んでいた。


 「まさか……ルナが裏切ったのか?」


 信じたくなかった。しかし、何度映像を見返しても、それは紛れもなくルナだった。


 「そんなはずがない……!」


 だが、アトラスの住民たちは彼女を信用していたわけではなかった。


 「やはり、ルナは敵だったんだ。」

 「もともと『失われた都市』の生き残りだろ? 何か裏があるに決まってる!」


 そんな声が飛び交う中、ソラだけは信じていた。


 「……違う。ルナが自分から行くわけがない。何か理由があるはずだ。」




 ソラは、アトラスの精鋭部隊と共にルナを奪還する作戦を立てる。


 ルナを乗せた飛行機は、アーク・エネルギー社の浮遊要塞**「ノア」**へと向かっていた。


 「ノア」は、雲海の上にそびえる巨大な空中艦で、エネルギーを搾取する装置を搭載した移動型の研究施設だった。


 「ルナを助けるには、今しかない!」


 ソラは、自ら空飛ぶ車を操り、仲間たちと共にノアへと突入する。


 敵の迎撃をかいくぐり、施設の奥へと進むと、そこには巨大なエネルギータンクに繋がれたルナの姿があった。


 「ルナ!!」


 しかし、ルナの体からは淡い光が漏れ出し、まるで彼女自身がエネルギー源になっているかのようだった——。




 「来ないで……!」


 ルナの声が震えていた。


 「何を言ってるんだ! 助けに来たんだぞ!」


 「……もう遅いの。」


 その時、施設のモニターが点灯し、アーク・エネルギー社の最高責任者ヴァルドが姿を現した。


 「お前はまだ知らないのか? ルナの正体を。」


 ヴァルドは冷たく笑いながら告げた。


 「彼女の体には、『エネルギークリスタル』と同じ力が宿っている。いや……彼女こそが、エネルギークリスタルそのものなのさ。」


 「な……に?」


 驚くソラに向かって、ヴァルドは続ける。


 「お前たちは知らなかったのか? 『失われた都市』は、人類が生み出した“究極のエネルギー生命体”の実験場だったんだ。」


 ルナの体には、地球の全エネルギーを操る力が宿っていた。彼女が完全に覚醒すれば、理論上、世界を再生することも、逆に破壊することも可能だった。


 「それを利用するのが、我々アーク・エネルギー社の目的だ。」


 ヴァルドは冷酷に言い放った。


 「人類の未来は、ルナの力にかかっている。」




 「だったら……!」


 ソラはルナの手を取ろうとする。


 「そんなの関係ない! 俺はお前を助けたいだけだ!」


 だが、ルナは涙を浮かべながら後ずさった。


 「ダメ……私がここにいれば、世界は私の力に巻き込まれる。」


 「そんなこと言うな! お前が望む未来を一緒に——」


 「ソラ、私は世界の脅威になりたくないの。」


 彼女の目に浮かんだのは、絶望と決意だった。


 「だから……さよなら。」


 ルナは、エネルギーの力を使ってソラを突き飛ばした。


 「ルナァァァァァ!!!」


 光が溢れ、ソラの意識は遠のいていった——。

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