第2話 最初の奴隷……?
「左から人族、獣人族、ドワーフ族の奴隷たちだ」
首輪をした男の奴隷が3人、目の前に並ぶ。
オールズは人族の奴隷から説明し始めた。
「人族はバランスよく何でもこなせるから、奴隷調教師になりたての初心者にはオススメだな」
「よ、よろしくお願いします」
合わせて人族の少年も俺たちに頭を下げた。
この奴隷は、確か俺やエリンとほぼ同い年だった気がする。
「次は獣人族だな。3種族の中じゃ運動能力が抜群だ。戦闘ではアタック型として最も頼りになる存在だろう」
「……ふん」
一方でこの犬の獣人は言葉なく、全くこちらに気を許していないといった様子。
オールズと同年代だが、実際の見た目はそれよりもっと若く見えた。
「最後はドワーフ族。そのタフな体は打たれ強く、タンクとしてパーティーを支えてくれる。そして手先の器用さを生かし、牧場経営のサポートにもなってくれるはずだ」
「うむ」
この中で最も背が低いおじさんは、もみあげから伸びるモジャモジャなあごひげも特徴的だった。
さらに最も年配ということで、奴隷であるのにオールズ以上に落ち着いて映る。
「二人にとって、最初の奴隷だ。じっくり考えて選んでくれていいからな」
「私はユウヒの後でいいよ。ユウヒが好きに選んで!」
オールズとエリンの言葉を受け、一歩前に進み出る。
紹介された3種族、3人の奴隷をゆっくりと見ていった。
「…………」
ここまでは、ゲームのイベント通りだ。
オールズの説明後、ライバルにもなる幼馴染が選択の先を譲ってくれる。
そして主人公の選択後、エリンはその右隣となる奴隷を選んでくるのだ。
人族を選ぶと、エリンは獣人族。
獣人族を選ぶと、ドワーフ族をとる、という風に。
【
よって選択は基本的に好き嫌い、見た目、直感とかでいい。
プレイヤーの中には、美少女幼馴染であるエリンにオッサン奴隷を持たせたいからという特殊な理由で、獣人族を選ぶ人もいるくらいだからな。
――ただし、これはモンスターと絆を育むようなゲームではなく、“奴隷”を扱うゲームという点に注意が必要となる。
「……じゃあ俺は、この“ドワーフ族”の奴隷を貰おうかな」
右にまた一歩進み、背の低い年上の奴隷と相対する。
見上げてくる目はこちらを見定めようとするような、つかみどころのないものだった。
「そ? わかった! じゃ、次は私の番ね!」
エリンは中央から左に歩を進めた。
「私はこの“人族”の奴隷にする! ――私、エリン。これからよろしく!」
「は、はい。よろしくお願いします」
エリンはドワーフ族から一つ右、つまり一番左の同種族を選んだようだ。
同年代、同じ人族、さらに少年の顔も悪くない。
……ということで、主人公がドワーフ族を選んだ場合のエリンについて。
『俺の方が幼馴染だったのにルート』とか『俺だけ青春できない青春ルート』とか『セルフ
誰だ、出てこい、許さん。
【
「――よし、二人とも、無事選べたみたいだな」
残った獣人族を自分の後ろに下がらせ、オールズが前に進み出た。
……ちなみに主人公が“ドワーフ族”を選んだ場合、このように獣人族の男が残ってしまうことになる。
最初の説明で若干反抗的な態度だったこともあり、プレイヤーの中ではこれを『オールズお仕置きルート』とかいってイジる人もいた。
流石にそれだけを目当てにドワーフ族を選ぶ人はいなかったはず……だと信じたい。
「これからは一人の奴隷調教師として生きていくことになる。“奴隷”を扱うということは自由であるとともに、大きな責任を伴う。他者の命を扱うことだと心得て欲しい」
奴隷調教師の先輩でもある父から、ありがたいお言葉をいただく。
エリンとともに、背筋がピシッと伸びる思いだ。
「ま、オッサンの
ニコッとしたオールズの笑みに温かいものを感じた。
ここからが、俺の奴隷調教師としてのスタートである。
◆ ◆ ◆ ◆
「――ねぇねぇ、ユウヒはこの後どうするの? せっかくだしさ、貰った奴隷同士を戦わせてみない?」
父の牧場から出てすぐ、エリンから物騒なお誘いを受ける。
二人きりのデートならともかく。
同じ“人”であるはずの奴隷を戦わせようぜという提案だ。
現代倫理観でいうと“えっ、エリンってヤバい女の子なの?”となるかもしれないが、ここは【
奴隷を育てるために、他の奴隷調教師が育てる奴隷とバトル、というのは一般的なのだ。
なにも殺し合いを始めるというわけではないし、実力を高め合うための模擬戦的な意味合いが強い。
「私に勝てたら、良いものあげるからさ。どう?」
美少女キャラとのバトル。
男性向け同人ゲームではお馴染み、勝者ご褒美にエッチいことが待ってる――というわけではない。
エリンの誘いを受け、バトルに勝てば“奴隷牧場”が貰えるのである。
主人公は確かに父から奴隷を貰ったが、その奴隷を育てるための土地・施設はまだ持っていない。
なので、これは奴隷戦のチュートリアルであるとともに。
“奴隷牧場”を得るためのイベントでもあるのだ。
「……すまん。ちょっとこの後寄りたいところがあって。その後でもいいか?」
――ま、すぐには戦わないんですけどね。
俺がドワーフの男奴隷を見ると、何かを察したというようにエリンは頷く。
「わかった! じゃあ準備ができたら言ってね。家で待ってるから」
そうしてエリンは人族の男奴隷を従え、自分の家へと戻っていった。
「さて――」
この後、村を回ったり最寄りの町へと出かけたりして準備をすることができる。
回復用のポーションを買ったり、奴隷の装備を整えることで戦力強化が可能なのだ。
一方で断らず即バトルに突入しようと、準備時間を貰おうと、エリンの奴隷の強さは変わらない。
なので選択の段階でどの種族の奴隷を選ぼうが、わざと負けようと変な指示をしない限りエリン戦では勝てる。
……残念だが、このエリン戦に敗北したら見られるイベントCG的な物はないのだ。
「じゃあ“町”へ行くか」
相棒となったはずのドワーフ奴隷の意思は聞かない。
互いの自己紹介すら済ませないまま、ある一つの目的をもって移動を開始する。
ポーションなんて買わない。
装備だって不要だ。
――だってドワーフの男奴隷が、俺の奴隷として戦闘デビューすることはないのだから。
俺はこれから、【
よし、売るか――。
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