スレイブファームでハーレムライフ〜奴隷を集めて育てて戦わせるゲーム世界に転生したので、奴隷ハーレム作って最強に育てようと思います!〜
歩谷健介
第1話 奴隷調教師に転生しちゃった!?
「どうですお客さん。ウチは良い奴隷をそろえてるでしょう?」
奴隷市場の一画で、奴隷商が自慢気に商品を説明している。
大きめに設置された露店、その敷物上にならばされた奴隷たち。
「…………」
だがそのどれにも、俺の目が奪われることはなかった。
確かにどの奴隷も見た目が良く、高そうな良い服を着せられている。
しかし俺の心をとらえて離さないのは、隅っこに追いやられている1体の奴隷だった。
「……えっ、と。店主。この奴隷は?」
衝撃のあまり言葉を失っていたが、何とか声を絞り出した。
だが奴隷商は、なぜ客がこんな様子なのか分からないといった表情。
俺の視線、そして指差す先を追い、ようやく何を聞かれたのかを理解した。
「あ~コイツですかい? いや、俺が言うのもなんですが、やめておいた方がいいですよ。こんな小汚い奴隷」
その奴隷――少女を、まるで汚らわしい物でも見る目で吐き捨てる。
しかし、商人のそんな言葉など全く響かなかった。
それどころか余計、この奴隷との出会いが、運命的なものであることを裏付けているかのようにさえ感じてしまう。
まさかこんな、序盤も序盤で出会えるとは。
何度も育てた。
何度も魅力的なイラストを目にしてきた。
何度も圧倒的な戦闘センス・強さを見せてくれた。
その彼女の容姿を、見間違えるはずがない。
「な、名前は? この少女の名前は何ていうんだ?」
決め手を求めて、喘ぐように言葉をつないだ。
商人はなぜそこまでこの奴隷に固執するのかわからないという風に、いっそ困惑している。
「ル、“ルミナス”です、確か。コイツ記憶喪失なんですが、それだけは覚えてるようで……」
決まりだった。
【
――伝説の奴隷の1体、ルミナスだ。
そうして。
ゲーム世界のキャラであるはずの彼女と、出会うことになるまでを思い出す……。
◆ ◆ ◆ ◆
「――ほらっ、起きて! もう朝だよ?」
耳元から聞こえてくる、女性の高い声。
経験ない出来事の違和感にせっつかれ、沈んでいた意識が急速に浮上する。
「あっ、やっと起きた!」
目を開けると、見知らぬ美少女が一番に視界へと飛び込んできた。
輝かしい金髪をポニーテールに結い、腰に手を当て可愛らしく怒りを表現している。
……いや、俺はこの女の子を知っていた。
「えっ、何で、エリンが!?」
あまりの衝撃に、思わず裏返ったような声が出てしまう。
だが原因の相手はそれに動じず、むしろ呆れたような表情だ。
「“何で”って……。今日はおじさんに奴隷を貰う日だって、ずっと言ってたのに。起きないから私が起こしに来たんでしょ?」
それは客観的に見れば確かに、俺が今尋ねたことへの返答にはなっていた。
だが違う、そうじゃない。
――“なぜゲーム【
決して“幼馴染のエリンがどうして俺の部屋にいるんだ”などと聞いたのではない。
【
奴隷を集め、育て、戦わせながら奴隷牧場を経営する、育成シミュレーションRPG。
とある奴隷好きを公言するクリエイターがイラストからストーリー、ゲーム部分にいたるまですべて一人で作り上げた異色の同人作品だ。
その執念とも呼べる熱意が伝わって多くのファンを生んだヒットゲームである。
俺も夢中になって何度も繰り返し遊んだ、大好きなゲーム――
――えっ、つまり俺はゲームの世界にいるってことですか!?
「奴隷を貰う日……それって今日は父さんが奴隷をくれる日、ってことだよな?」
質問したというよりは、自分の記憶を確かめるために口にしたというような感じだった。
だがその呟きを拾ったエリンは、とうとう心配そうな表情でこちらへ顔を近づけてくる。
「ねぇ、大丈夫? 寝ぼけてるだけかな。……ちょっと自分の名前、言ってみてよ」
――うわっ、ゲームのセリフまんまだっ!
とびきり整った異性の顔が接近するドキドキよりも、そちらの感動の方が勝ってしまった。
【
最初のイベントとして、主人公の父親から奴隷を1体貰えることになっている。
だがその大事な日に寝坊した主人公を、幼馴染で奴隷調教師のライバルとなるエリンが、起こしに来てくれるのだ。
そして寝ぼける主人公を心配したエリンに、名前を答えて覚醒していると伝える。
ここでプレイヤーは、主人公の名前を入力して決めることができるのだ。
「ユウヒだよ。大丈夫、ちゃんと起きてるって」
ずっと主人公につけていた名前を口にする。
ゲームでは無言系主人公だったが、今の俺はちゃんと声が出ていた。
「よかった。もう、心配させないでよね! ――じゃ、私は先に行ってるから。二度寝しないでよ、ユウヒ!」
ゲームのテキスト画面ではここから、エリンが主人公のことを名前で呼んでくれるようになる。
だが今目の前にいるエリンには、ゲームのテキストにはついてなかった可愛らしい声がちゃんとあって。
今この場所が現実なんだと、直感にこれでもかと訴えかけてくる。
快活で明るい幼馴染は眩しい笑顔を浮かべ、短いスカートを翻して部屋から去って行った。
……どうやら俺は、ゲームの世界に来てしまったらしい。
◆ ◆ ◆ ◆
「うっわ。俺こんなイケメンだったっけ?」
桶にはった水。
そこに映った顔は、いつも見慣れた“俺”のものではなかった。
目にかかるくらいの艶のある黒髪。
鼻も細くスッと通っている。
まるでゲームか物語の主人公みたいなイケメンだ。
「……いや、そうか。主人公なのか、俺」
【
彼は立ち絵やイベントシーンなどで、口だけしか描かれていないのっぺらぼう的なイラストだった。
まあ主な購買層が男性、つまり美少女キャラ目的を想定したゲームである。
男の主人公に顔がなくても全く問題はなかったが。
それが今。
ちゃんとカッコいい青年の顔でいられているのはホッとする。
……顔無しで異世界転生とか、どんな特殊プレイだよって感じだもんね。
「全部が全部ゲームのまんまってわけじゃないんだろうなぁ……」
主人公の家、つまり俺の家を出て、最初のイベントの場へと向かう。
ゲームの記憶と当てはめながら、村の中を歩いて行った。
そこはうんざりするほどに見慣れた、現代地球の町ではなく。
やはりゲームで慣れ親しんだ、ファンタジー世界の田舎村だった。
「あら、ユウヒ君じゃない。エリンなら、あなたのお父さんの牧場に走って行ったわよ?」
道中、エリンのお母さんに出会う。
ゲームで彼女のイラストはなかったが、未だ若々しくエリンそっくりの美人だった。
ちなみに、未亡人設定である。
「ふふっ、エリンのことよろしくね」
「はい。行ってきます」
挨拶して別れ、先に行ってしまった幼馴染の後を追う。
【奴隷牧場】ではプレイヤーが目的地にたどり着けるよう、メニュー画面の“マップ”機能があった。
今なら村の北外れにある“父の奴隷牧場”に赤い丸があり、点滅を繰り返しているはず。
しかしもちろん、今の俺はマップなど所持していない。
まだ比較的広くない村で位置も覚えてるから問題ないが。
これが後々行く大都市なんかになると、ちょっと苦労しそうだ。
「あっ、来た来た。遅いよ、ユウヒ!」
牧場前までやってくると、エリンがわざわざそこで待っててくれていた。
同年代の可愛い幼馴染は、人懐っこい嬉しそうな笑顔を浮かべる。
ぐっ、やめてくれ……。
そんな青春の一コマみたいな表情は、灰色の高校生活を送ってた俺に効く!
誰とも挨拶することなく、まっすぐ自席へと向かう朝登校。
話す奴いないと思われたくなくて、机に突っ伏して寝たフリをする休み時間。
『はい、じゃあ二人組作って~』の呪詛にいつも怯えた体育の授業。
うっ、頭が!
「……悪い。さっ、行くか」
何とか切り替え、エリンを伴い牧場の中へ。
柵に囲まれた敷地内は静かで、草を踏みしめる音だけが耳に届いてくる。
広い自然の中を歩いていくと、ようやく人の姿を見つけることができた。
「――おっ、二人とも来たな」
大きな
主人公――俺の父親、オールズだ。
「こんにちは。お待たせしました、おじさん」
「こんにちは、エリンちゃん。大丈夫、どうせユウヒが寝坊でもしたんだろう」
俺を差し置いて仲良く話すエリンとオールズ。
むしろ、この二人が親子なんじゃないかと思ってしまうくらいの親しさだ。
「……悪かったよ。昨日は興奮して上手く眠れなかったんだ」
そんな事実はもちろんない。
だがこの場を上手く進めるため、それらしいことを言っておく。
「ははっ、だろうな」
オールズは軽く笑って流し、すぐに歩き出す。
淡泊な気もするが、父親と息子のやり取りなんて異世界でもこんなものなんだろう。
向かうは目の前、厩舎の中のようだ。
【
このゲームの世界における“
“奴隷”、つまり“人”を飼うための建物を意味しているのである。
「――二人はもう奴隷を持っても良い年頃だろう。3体、奴隷を用意した。約束通り1人1体ずつ選んで、奴隷調教師としての人生をスタートしてくれ」
そうしてオールズは種族の違う奴隷を3体、俺とエリンの前に並ばせたのだった。
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