第4話 ホテヘル

 ——体験談を書いてみたら、何か心のどこかが埋まったりするかしら?


 試しに書いてみようかとWEB小説の読み専アカウントを開く。

 そして、新規作品を作成するボタンを押してみる。

 タタっとフリック入力してみる。


『実は、あたしは元ソープ嬢だ』


 最初に働いたソープランドという業種は、お店がお風呂付個室を貸して、女の子が入浴のお手伝いをするサービスだけど……


『女の子とお客様が自由恋愛に落ちて、エッチしちゃいます』


 日本では唯一法的に本番(エッチ)が黙認されているのよね。

 それで、お客様を王様のようにもてなし奉仕するお店。


 他にも風俗にはいろいろあるらしいよ。


 例えばファッションヘルス。通称ヘルスもしくは箱ヘル。

 基本はお口やお手てでサービス。

 股に挟んで疑似エッチもするんだよ。

 

 ——でも本番は禁止だからね。


 ピンクサロン。通称ピンサロ。

 大部屋に設置したブースでサービスを行うらしい。

 

 ——シャワーないし、隣では違う女の子がサービスをしているしで、環境は良くなさそうね。


 メンズエステ。

 手のみのサービスなんだって。


 あと、個室をお店が準備するんじゃなくて、


「ラブホ空き室や自宅を使っちゃえば楽じゃね?」


 と考えた人がいるらしい。


 おかげで、無店舗型のホテルヘルス(通称ホテヘル)やデリバリーヘルス(通称デリヘル)が誕生したってわけ。


 『あたしは、現役ホテヘル嬢です』


 ホテヘルは、受付はあるけどサービス用個室はないから、提携するラブホテルへ移動してサービスを行う。 


 本番はNGよ。


 でも、あたし、セックスは好き。


 男性が果てるときに見せる無防備な脱力感をみるとなんだか満たされる。

 あたし自身も感じやすいし。

 仕事中でも相性が合えば絶頂も迎える。

 そうでなくても、中に迎え入れた熱さだけでも心地が良い。


 ——だったら、ソープのままでよかったんじゃないの?


 と言われそうだけど、あたしはホテヘルに移籍したのよね。

 あの泡の世界を構築している奉仕機械のような義務感と、女の子たちとの見えない軋轢が、あたしには合わなかったんだ。


 それに……


 あたしはキー入力を続ける。


『ホテヘルはお店の監視の目からは遠くなるから、認められていないはずのサービスが横行しています』


 つまり、ホテヘルでも本番をしちゃってるんだよね。


 ——まあ、ソープ出身のホテヘル嬢が本番をしないというのも変な話だもんね。


 てか、こんなこと書いたら人には見せられないわね……


 あたしは一人、ため息をついた。

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