第3話 ノーブラノーパンオプション

 今回も無事に(?)二回戦もたくさん吹き、たくさん出してもらった。

 ピロートークを経て、時間が来たらシャワーを浴びて部屋を退室する。


 部屋を出て、ホテルのエレベーターの中で最後のお別れのキス。


「今日もよかったよ。最後にご挨拶……」


 ヤマさんはそう言うと、コートの中のあたしの胸にワンタッチ。

 行きも帰りもノーブラの感触を味わいたいらしく、『ノーブラノーパンお出迎えオプション』を指定してくれる。


 「部屋の中でこれでもかってくらい揉んだり突いたり顔をうずめたりしたじゃないですか」


 苦笑い。

 まったく……男子の考えることは理解がついて行かない。まあ、いいけど。


「お二つ、持って帰りますか?」


 あたしは胸をグイッと差し出しつつほっぺたを膨らませるが、怒っているわけではない。

 ちょっと、あざといくらいが受けるのよね。


 お返しに、ズボンの上から軽く撫でてご挨拶する。


 ——また早いうちに帰ってくるんだよ?


 エレベーターは一階に到着。

 受付で部屋代を清算してもらうとホテルを出た。


 店が入っている雑居ビルまで、わずか数分の送迎時間。

 ほとんどの時間をホテルの中か待機室か事務所で過ごすあたしにとって、外気を取り込める清々しいお散歩タイムだ。


 寒いからぴったりとヤマさんの左腕にしがみつく。

 おっぱいを意識的に押しつける。

 そのためのノーブラオプションだもんね。


「いやー、本当に寒いね」

「一月も下旬ですから。風邪ひかないでくださいね」


 あたしの指先がヤマさんの腕を軽く叩く。

 ヤマさんはあたしの指をきゅっと握ってくれる。


「さっきの体験談、マジで面白いと思うよ。本気で考えてみてよ」

「もう、あたしにそんな才能無いですよ?」

「大丈夫。執筆するホテヘル嬢、期待しているよ」


 うーん、困ったな、と苦笑いしたときには雑居ビルの前に到着していた。


「じゃあ、また今度。ありがとう」

「こちらこそです。またイチャイチャしましょうね」


 ヤマさんは少し先の路地を曲がると手を振ってくれて、あたしも手を振り見送ると、何の気なしに空を見上げてみた。


 十八時前。

 一月下旬。冬の夕暮れはかなり暗い。

 繁華街の灯りが灯り、星の一つもみえやしない。


 あたしはぶるっと身震いした。

 そういえば、ただいま絶賛ノーブラノーパン中。

 風邪ひいたら行けないし、早く戻ろう。


 ——それにしても……体験談ねぇ。もしかしたら、書いてみたら面白いのかな?


 心なしか、事務所に戻る足取りが少し軽やかに感じた。

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