Ep.Ⅱ
村が悲劇に見舞われてから数日が経った。
その村へと向かう人影が一つ。
(もうそろそろのはずなんだけど…。)
額に汗を滲ませながら歩き続ける人影がある。
歳は成人を迎え少しと言ったところだろうか。
長く整えられた青色の髪を後ろに纏め、汗を滲ませ歩くには似つかわしくない服に身を包んでいる。
鬱蒼と木々が生い茂る中、きちんと整備された道をひたすらに歩いていく。
地図と睨めっこをしながら歩くこと数時間、眼前にはようやく目的の場所が見えてきた。
本来ならばそこには村がある。
木で作られた家々が建てられ、決して多くはないが一人一人が明るく優しい笑顔を見せている。
はずだった…。
「えっ…?」
慣れない道を進み辿り着いた場所に広がっているのは地図と共に添えられた写真に写る姿は無く、黒く焼け焦げ無惨にも燃え尽き、跡形もなく消え去った「村だった場所」だった。
「何があったの…?」
ただただ呆然と目の前に広がる光景に目を疑う。
「だっ誰か!誰か居ませんか!!」
黒く焦げ付いた地面をゆっくりと踏みしめながら一縷の望みをかけて声を上げる。
誰か居ないだろうか、生きてる人は?
ぷすぷすと焼け跡から聞こえる音だけが耳に入るだけで誰からの返事もない。
村に入ってからまだ数分しか経っていないが如何ともし難い不安が込み上げてくる。
誰か…。
そう心の中で祈ったとき、小さいながらも微かにうめき声のようなものが聞こえた。
ハッとした表情を浮かべた後にその声のする方へと駆け出していた。
「大丈夫ですか!?」
焼け焦げ崩れ落ちた建物の脇に行きも絶え絶えな男が倒れていた。
すぐさま駆け寄り救護を試みるが一目見た瞬間、彼女はもう助けられないことを悟った。
「う…あっ………」
口をパクパクと動かしながら身体の半身が焼けこげた男は何かを伝えるように声にならない声を出していた。
「一体何が…何があったんですか…」
それに気付いたように彼女は口元へと耳を近付けた。
「あ…あれは…化け…も……私たちは…ま…まお…うを…」
「魔王?魔王が攻めてきたんですか?」
「ちが…ま…おう…を…よん…みん…燃やされ…」
「頑張って…何があったんですか!」
必死に聞き出そうとするが男からそれ以上の返事は無かった。
息絶えた男に手を合わせゆっくり立ち上がると他に手掛かりはないかと村を散策し始める。
(何か…手掛かりは…)
一抹の不安を胸に抱きながら、村で儀式を行う祭壇へと足を向けた。
村の様相に似つかわしくない絢爛なその場所も火の勢いには勝てずほとんどが燃え尽きていた。
ここにも無いか…。そう心の中で思ったとき祭壇の真ん中に燃え尽きていない紙を見つける。
「これは…手紙…?」
その紙を手に取り書かれている内容を読んでいく。
最後の文字を読み終えた後、その紙を丁寧に折りたたみ更に歩を進める。
険しくもどこかまだ不安の残る表情で惨劇に見舞われた村を後にする。
残された紙に記された目的地を目指して…。
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