番外編

「…え?」


 ドアを開けたらフミちゃん先輩が俺の目の前にいたんだけど、これって夢じゃないよな?実はまだ寝ていましたー、みたいな展開にならない?


「ごめんね。しんどいのに」


「あ、いえいえ」


 俺だってアホじゃないんだから夢か現実かくらいすぐに分かるよ。これは嬉しいことに現実なんですよ。


 えー!まさかフミちゃん先輩が俺の家に来てくれるなんて!もう風邪なんて引いてられないな、今すぐに治さないと。


「暑いですから入ってください」


「ありがとう」


 キャー!フミちゃん先輩が俺の家(水野祥太の家)に入ってくれたー!


 この家は俺と早乙女とクソゴミ女神しか入ってこなかったから嬉しい。


「お茶出しますね」


「何言ってるの?病人は寝てないと」


「せっかく来てくれたんですからお茶くらい出しますよ」


 ここで俺の中に眠ってるおもてなし精神を出さないといつ出すんだって話だ。


「良いから寝てて」


「…はい」


 


 …俺のおもてなし精神にはもうちょっとだけ眠っててもらうことにしてもらった。




 とは言っても家にフミちゃん先輩がいたら寝れないよね〜。目を閉じたら心臓の音がうるさくて中々寝つく事が出来ない。


 こんな暑いのにちゃんとクソデカ帽子を被ってるのは本当に尊敬する。俺だったらキャラデザ担当した奴を永遠に恨んでるな。

 

 あれ絶対首にクルよな、ヘルニアにならなければ良いけど…。

 

「ここかな?…あ、当たった」


 フミちゃん先輩はトレイに何かを乗せてやってきてくれた。


「ジャーン!お粥作ったよ」


 まず、ジャーン!が可愛い。その自信満々な感じが堪らない。


 あと、俺の為にお粥というご馳走を作ってくれたことに全身全霊で感謝したい。どうやら俺の最後の晩餐は決まったようだ。


「…嬉しいです。俺…、感激です」


「そんなに喜ばれると照れるよ」


「照れることなんて無いですよ。こんな立派なお粥を俺は食べることが出来るんですから」


「嬉しいなら良いけど」


「ありがとうございます」


 食べたいけど食べてしまったら無くなってしまう、せっかくのお粥を食べてしまうのは勿体無いな。


 でも、食べないと失礼だからなぁ。


 前までバカにしてたけど、食べる前に写真を撮る奴らの気持ちが分かったかもしれない。


 …だが!冷めないうちに食べるのが礼儀だ!


「いただきます」


 究極の2択を迫られたけど礼儀が勝ってしまった。


 …どうして勝ってしまうんだ。


「熱いからフーフーしてあげよっか?」




 …へ?


 熱いからフーフーしてあげよっか?…だって?


 そ、そんなのお願いするしかないよな?ここで断ってしまったらときドキオタクが廃れる。


 良いんですか?お粥も作ってくれてフーフーもしてくれるんですか?


 後からお金の請求とかされないよね?まぁ、されたとしても払いますけど。



「えー、あ、…へへ。…自分で冷まします」


 この大馬鹿野郎が!


 俺はどうしてこんな絶好のチャンスで日和ってんだよ!


 ヘラヘラしてんじゃねぇよ!もっと反省しろ!


 このチキン野郎がよ!クリスマスにはまだ早いだろ!


「そう?火傷しないでね」


「へへ、はい」


 








 …フーフーして欲しかった。












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