第10話

 紆余曲折、曲がりに曲がりグニャングニャンになってたけど何とか久田ちゃんのプロローグは終わったと言っていいだろう。


 久田ちゃんを探しに行って早乙女がいないって言った時はどうなるかと思ったけど、パワープレイで曲がった物を無理やりまっすぐにしてやった。


 怪力な男がフライパンを曲げるアレみたいに、怪力男が原作を曲げようとしたけど俺がそれより強い力で元の原作に戻した。…分かりにくいか。


 それに、俺はほんのちょっとの間だけど主人公体験もさせてもらえたのは嬉しかったなぁ。もうあれを超える幸せに出会えるかが心配になってきた。


 ちゃんと早乙女が久田ちゃんおぶって来た時は感動したなぁ。あれが無料でレジ袋が有料なのはおかしいと思う。


 もうこれは大満足のプロローグと言っていいでしょう。はなまる満点あげちゃう!


 いやーそうなると新色と久田ちゃんの早乙女への好感度が気になるな。今回で結構上がったんじゃないか?このままいったら俺が頑張らなくても自然と好感度が上がって、パパッと80%いっちゃうんじゃない?


 好感度くらいいつでも観れるようにしてくれよ!あの女神の気まぐれでいつ来るか分からないから好感度がいつになっても観れない。暇なんだからずっと居ろよ。…いや、ずっと居られても困るな。


 フミちゃん先輩のプロローグまで少し時間があるから、その間の時間は原作に無いからまた水野祥太としての何でもない学校生活が始まる。








「ウィー」


「よっすー」


 早乙女と独特なあいさつを交わす。ずっと一緒にいるとあいさつするのも面倒くさくなってくるんだよ、仲が悪くなった訳じゃないけどもう目線も合わさないから。


「期末ダメだったら補習だってよ。お前は大丈夫そ?」


「もちろん無理だよ?」


「だよなー」


「お前は?」


「聞くだけ無駄だな」


「やっぱり?」


 俺が転生する前はヒキニートだったけど、引きこもりになったのは高一の途中だから別に転生前の高校生の勉強の知識がある訳じゃない。つまり俺は新しくまた高校の勉強をしてるのだ。


 転生前で分からなかった所は転生してもう一回授業を受けても分からないままだ。分からない事は一生分からない。


 そう考えると異世界に転生しなくて良かったと思う。転生前の知識が無い俺は異世界に転生しても知識が無いから全然物を生み出せないし、治療も出来ないし、何も作れないし、一緒に悩むだけしか出来なかったな。パンはシチューに付けると美味しいですよ、くらいの情報しか提供できない。「わぉ、本当だ!パサパサのパンにシチューを付けて食べたら美味しくなったぞ」…これだけじゃ知識チート出来ないな。

 

「勉強会やる?」


「アホ2人で?」


 アホ2人で「ここ分かるか?」「分からん」が繰り返されるだけの空間が完成してしまう。


「テメェわざとだろ!」


「は?言いがかりやめなよ」


 アホ2人が会話してたら突如久田ちゃんの声が教室に響く。


 な、なに?俺大きい声出されると反射でビクッてなちゃうからやめてよ。そもそもこんなの原作に無い展開なんだけど、もしかしてカットしたのかな?


「わざとっていう証拠でもあるの?」


「チッ」


 久田ちゃんは何か言いたそうにしてたけど、舌打ちをして席に座った。3人組はそんな悔しそうにする久田ちゃんを見て嬉しそうに教室から出て行った。小物感がすごいな。


「何があったんだ?」


「さぁ?俺らには関係ねぇ事だよ」


 俺はやっと事態を把握した。


 これは今後の展開なんだけど、文化祭の準備期間に久田ちゃんは勇気を出してあの3人組とそのグループにまだイジメられてることを早乙女に打ち明けるシーンがある。そして文化祭でざまぁイベントが発生して、泣きながら早乙女に初めてお礼を言う名シーンがある。ここドチャクソ泣いた名シーンだからよく覚えてる。


 今は反抗してたけど段々反抗しなくなってくるけど、これじゃダメだと思って早乙女に相談するシーンも感動するだよ。このシーンの為にもこのイジメは見て見ぬふりをする必要がある。


 だから、今は久田ちゃんに我慢してもらう必要がある。辛いだろうけど文化祭まで耐えてもらう。

 

「大丈夫かな?」


「あ?大丈夫だろ。そんな事より俺らも危ないからな補習だけは何とか避けたいからな」


 ここで主人公感を出してきてイジメを止められたら原作が変わってしまう。まぁ今の所順調に原作通り進んでるから俺が何かをする感じでも無い。


 原作だと早乙女は久田ちゃんのイジメに気付いてないって事は3人組は上手く隠してやってるな。クラスの奴らも良い奴らばっかりだから見かけたら先生に言うくらいはするから相当上手く隠れてるな。


 俺が転生前の時は堂々とイジメられてたからダメだけど感心してしまうな。何より久田ちゃんは強いから絶対に弱音を吐かないし、そんな態度も見せない。だから、誰も気付かないし、気付けない。


 とりあえずフミちゃん先輩のプロローグが始まるまでは何事も起こらない事を願う。




 

「ただいま〜」


「おかえり〜」


 またいる。


「おい!勝手に入るなよ!」


 あのクソ女神め、また思春期の男の家に勝手に入り込みやがって。せめて前日に一言あっても良くない?こっちだって色々あるんだし。…違うよあれだよ、洗濯物とか、…ほら、洗い物とか。


「うるさいなぁ。こっちは仕事で疲れてんの。ちょっとは労りなさいよ」


「労られたいならちゃんと女神しろ」


「うわ、そういうこと言うんだ。もう好感度見せるの面倒くさくなってきたな」


「このクソ女神が」


 …と言いたかったけどもう喉のギリギリの寸前の所までで何とか耐えた。もしかしたら一文字だけ吐いちゃったかもしれない。でも、全部言わなければセーフだから。


「もう〜そんな事言わないでくださいよぉ。我々人間は女神様あってこそですから」


 謙る時は限界まで謙らないとな、ここで変なプライドを見せたところで俺のメリットが無い。好感度を出された俺はとことん弱い、すぐにヘナヘナになってごまをする事しか出来ない。


「分かってるじゃない。あ!あと冷蔵庫のプリン美味しそうだったから食べちゃった」


「へへっ、そんなのいくらでも食べてくだせぇ」


 絶対に許さない。俺はこいつを許すことが出来ない。こいつに上司がいるなら30%以上の減給を要求したい。だが、そんな事したらまた俺の所にメシを食いに来そうだからシンプルに殴らせてくれ。


「なに?最近あんた随分と順調そうじゃない」


「ん?あ〜そうだな。ちょっとイレギュラーがあったけど、ほとんど原作通りにいってくれてるから超順調」


 俺がこうやってクソ女神に謙ってるのもこうやって順調に進んでるからだ。


「お前は何で順調に進んでるって知ってるんだ?」


「転生者の事を知っておくのも女神の仕事なの」


「一応女神の仕事もしてるんだな」


「一応って何よ、一応って」


「だってお前が仕事してるとこ見た事ないから」


「あんたを転生してやったでしょ!あれも立派な仕事なの!」


「ヘ〜」


「で、どうするつもりなの?」


「何が?」


「何ってあの口が悪い娘よ。イジメられてるんでしょ?どうやって解決するのよ」


 口が悪い娘って事は久田ちゃんの事だろうな。イジメられてるのを知ってるって事は本当に俺の事知っておいてるんだな。


「解決なんかするかよ。ここで俺が解決したら原作通りに進まなくなるだろ?」


 俺の事知ってるんだろうけど、ときドキの原作は知らないんだろうな。知ってたらわざわざ俺に聞かないからな。


「…何それ」


 さっきまでアホみたいにヘラヘラした顔が急に真顔に変わった。


 怖っ。何こいつ、二重人格なの?


「それ、本気で言ってるの?」


「本気も本気。大マジだよ」


 俺はおばあちゃんに会うために頑張ってるんだよ、それに必要なのは原作通りに進める事。それ以外の事はどうでも良い。


「何もしないの?あんたは知ってて放っておくの?」


「そうだって言ってんだろ?で、お前は何が言いたいんだよ」


 女神がまどろっこしい言い方をするからこっちもイラついた言葉になる。


「もういい、そんな奴だとは思わなかった」


 女神は立ち上がって帰る準備を始めた。


「おい、待てよ!好感度はどうすんだよ!」


 好感度を教える前に帰ろうとする女神を必死に止める。


「原作通り進んでるんでしょ?じゃあ高いんじゃない?」


「適当すぎるだろ。え〜ほら、あの本出してくれよ。ボンッて」


「また料理食べたくなったら来るから」


「おい!帰るな!」


 俺の願いは虚しくも女神には届かなかった。


 んだよ!こっちが原作通りに進めて何が悪いんだよ!そもそも女神が仕事に私情を持ち込むなよ!


 あー!当分はヒロインの好感度が観れねぇじゃねぇか!好感度が観れないならこっちだって余計に原作通りに進めないといけなくなるからな!















 はぁ〜めんど。

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