第3話

 腕の二、三本は覚悟したけどファミレスの豪遊代を奢る事で許してくれた。悪口を言っちゃった奴らは分かるけど早乙女の奴もちゃっかり付いてきて、俺が奢ってやったからな。


 まぁ男7人でワイワイして楽しかったから良かったけどな。転生前は知らなかったけど友達(仮)と遊ぶのって結構楽しいんだな。


 そんな事より!新色だよ!どうしよう?もうこれって結構キツいのかな?早乙女の事そんなに好きじゃないの?あんなにかっこいい奴なのに。何よりあいつ主人公だから。


「ただいま」


 おかえりって言葉は返ってこないけどいつも言うようにしてる。転生前におばあちゃんが大切にしてた言葉だから。


 俺は「おかえり」って返した事は無いけどいつもおばあちゃんは「ただいま」って言い続けた。だから「ただいま」って言うとちょっとだけおばあちゃんを感じる気がした。


 いつかは必ずおばあちゃんに「ただいま」「おかえり」が言えるようにしたい。


「おかえり〜」


「は?」


 あれ?家間違えた?俺の家には誰もいないはずだからおかえりなんて返ってこないはずなのに。


 だけど、冷静になったらすぐに誰がいるか声で分かった。


「おい、何でいるんだよ」


 リビングにあるソファで横になってくつろいでる女神に疑問をぶつける。


「別にいいじゃない、私がどこにいようが」


「それにそれ俺の服じゃねぇか」


 いつもの衣装じゃなくて俺のTシャツを着てくつろいでる。羽って自由に出したり消したり出来るんだ。羽があったら俺の服の肩甲骨の部分だけが破れてしまう。


「別にいいじゃない、減るもんじゃないし」


「そらそうだけど…」


「この服気に入ったから貰ってくわね」


「減ってんじゃねぇか!」


 こいつ本当に女神か?こんなめちゃくちゃな女神聞いた事ないぞ。それ俺も気に入ってたTシャツだったのに。


「で、何でいるんだよ」


「今私の機嫌が良いから好感度見せてあげようと思って」


「マジで!」


 よっしゃ!心の中で渾身のガッツポーズを決める。これで今がどの地点にいるか分かる。


「ちょっと待ってね」


 横になってた体を起こして、ボンッと目の前に本を出した。これを見せられると本当に女神なんだなと思う。たとえ勝手に家にあがって服を奪おうが。


「え〜どれどれ〜。あ、これかな?」


 その本で俺の転生前の事も書いてあったから、その本って本当に万能だな。別に使わないけどボンッと本を出したいから欲しいな。だってかっこいいじゃん。


「新色の早乙女への好感度は今」


 頼む、せめて15は欲しい。原作通り進んでたら20は超えるけど、原作通り進んでない所もあったから20は超えてないと思う。13〜15だったら間に合うけど10以下だったらもう絶望。まだ2人のヒロインもいるから新色はさっさと80は越えさせたい。


「21ね。まぁ順調なんじゃない?」


「21!本当に21!?」


「21、21」


 女神は面倒くさそうに答える。


 良い!めっちゃくちゃ良い!何だよ、さっきまで心配してたのが馬鹿みたいだ。じゃあちゃんと早乙女の事好きじゃん、変な反応しないでよ。


 一安心一安心、これでしばらくは久田ちゃんに専念できる。


「ねぇ晩御飯はまだ?」


 こっちが喜びを噛み締めてるのに邪魔しやがって。


「いつまでいるつもりだよ」


 このままずっといられたらストレスでおかしくなる。おかしくなるならまだしも、女神に手が出る事になるかもしれない。


「晩御飯食べたら帰るから」


「で、俺が作るのかよ」


「当たり前じゃない、私はお客様よ」


「お客様なら勝手に家にあがるなよ」


「あーそんな事言ったら当分機嫌悪くなるかも〜」


 女神の気分次第で好感度がチェックできるから、つまりこいつは今晩御飯作らないともう好感度チェックさせないから、と俺を脅してるのだ。


 これが本当に女神がやる事か?


「チッ、分かった分かった。作るからこれからも好感度を見せに来いよ」


「どうしてあなたは私にタメ口なの?私は女神様なのに」


「女神なら女神らしくしてくれ。他人の家で勝手にくつろぐな」


「私は普段の仕事で神経をすり減らしながら日々頑張ってるの。そんな事より客人にお茶の一つも出せないの?」


「どうせ仕事サボって今来てるんだろ?そんな奴が何が神経すり減らしながら仕事してる、だよ。あとお前みたいな奴に出すお茶は無い。ジャスミン茶はあるけど」


「あのね、人間と違ってこっちはずぅ〜と仕事してるの。あなたのおばあちゃんが生まれる前ずっと前から仕事してるの。そんな私にまだ仕事しろって言うの?あと、私はジャスミン茶は私の中でお茶だと思ってないから」


「女神なんだからそんくらい当然だろ。そもそも女神の仕事ってなに?見守ってるだけ?あと、俺はジャスミン茶はお茶だと思うけどなぁ。紅茶にしとくか?」


「仕事の内容は言えないけど、とにかく忙しいの。紅茶でお願い」


「はいはい」


 料理をする手を一旦止めて紅茶を淹れ始めた。






「「いただきます」」


 2人で向かい合わせに座って食事をする。女神と食事ってすごいな。文字だけ見たら緊張するけど目の前の奴を見たらそんな緊張はアホらしくなる。


「あんたって料理出来るんだね」


「昔おばあちゃんに教えてもらったんだよ」


「だからこんながっつり和食なのね」


「おばあちゃんは和食が得意なんだよ」


 おばあちゃんが作る和食料理が世界で一番美味いからな。


「私、洋食の口だったのに」


「黙って食え」


 人が作った料理に文句言うなよ、って言いたいところだけど俺もおばあちゃんに言ってたなぁ。…ごめんね。


「上手くいってるの?」


「何が?」


「何がって、学校生活よ」


「まぁぼちぼち」


「本当?ヒキニートのあんたが?」


「今は人気者なんだよ」


「ちゃんと馴染めてるの?」


「上手くやってるよ。誰も俺が元ヒキニートって気づいてないぞ」


「そんな誇らしくされても」


 誇らしいだろ。


「で、ちゃんと会わせてくれるんだろうな?」


「何の話?」


「何の話?じゃなくて、ヒロイン全員好感度80%にしたらおばあちゃんに会わせてくれるんだよな?」


「あ、うん、もちろんよ」


 女神のちょっとだけ目が泳いでたけど、こいつの言葉を信じよう。


「おかわりちょうだい!おかわり!」


「お前なぁ」


 俺は呆れて言葉が出なかった。おかわりくらいは自分で行けよな、コイツ普段どうやって生活してるの?


「早く!」


「はぁ」


 コイツからお茶碗をとり、渋々おかわりしに行った。


「あんた料理上手なんだね、すごく美味しいよ」


「あんがと」


 料理を褒められると割と今までの行動を許してしまうくらい嬉しい気持ちになってしまう。おばあちゃんの料理を食べる機会があれば次はちゃんと美味しいって伝えたい。










 ***




「ただいま〜」


「先輩どこ行ってたんですか?」


 女神にだって後輩はいる。もちろん先輩だっている。外国にもいる。やる事がいっぱいなのに女神は1人で頑張れって?どんなブラックな職場だよ。


「転生者の所」


「またそんな勝手して、怒られますよ」


「バレなきゃ良いの」


「もしかしてお気に入りの所ですか?」


「別にお気に入りとかそんなんじゃないから。ただの様子見」


 この後輩は私があいつをお気に入りだと思ってるらしい。どんな目をすればそう見えるんだろう。


「なら良いんですけど」


「あんただってお気に入りいるじゃん」


「私はイレギュラーが起こってしまったので、仕方なくですよ。現に怒られてませんし」


「私だって怒られてないし」


「先輩のはバレてないだけですよ。…良いんですか?」


「何が?」


「あんな事言って」


「だからなに」


「転生者が現世の人に会わせることですよ。あれ結構タブーらしいですよ」


「大丈夫。あいつには無理だから」


 転生前の記録を見た感じ根性が無さそうだからそこは心配してない。


「本当に大丈夫なんですか?」


 まったく、面倒くさい後輩を持ったよ。


「それよりあんたにいつも付いてるポヨポヨうるさいやつは?」


「ポヨポヨうるさいんで押しつけました」


 時々怖い所見せてくるんだよな。


「はぁ〜私も風邪ひきたいなぁ」


 急にどうしたの?風邪がひきたい?女神にそんな身体の機能無いのに。


「人間に憧れてるの?」


「風邪ひいたら先輩のおかゆ食べれるのになぁ、って」


「…へ?見てたの?」


「はい!もうバッチリ!いや〜先輩は可愛いなぁ、お気に入りじゃないって言ってたのにおかゆ作ってあげるんですから。あ、もしかして今日行ったのっておかゆの感そ…」


「消す」


「待って待って待ってそれシャレにならないやつ!」


「記憶を消してやる!」


「待っ…先輩!…あーー!」

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