第4話
すぐに変化は起こらなかった。
生き残りの兵士は慌てて立ち上がった青年がトドメを刺し、その場に倒れ込んだナイトの身体を何度も何度も揺すった。
自分を庇ったことで国の抑止力となっているナイトにもしものことがあったらどうしようと、青年は安否を確かめるためにナイトの顔に触れる。
ナイトにかかった液は変な匂いはせず、汚れた水の色をしていた。その場ではそれが何なのか、青年には判断が出来なかった。
生き残っていた数十名の兵士達も倒れ込んだ英雄騎士ナイトの様子を見ようと身体を引き摺りながらその場へと集まる。
「ナイトさん!ナイトさん!」
「…問題ない」
「すみません、すみません!!僕を庇って…!!」
「目眩しに水でも用意していたんだろう」
「でもっ…!」
目元についた液を擦り、顔を上げれば今にも死にそうな顔をした青年がナイトを見ていた。安心させる為に少し笑うと、戦が終わったことへの安堵か、ナイトが生きていたことへの喜びか、青年の目からぽろりと涙が零れる。
戦になればいつ死ぬのか分からない。
その恐怖はナイトですら心の内に秘めていることだった。
父を失ったことでナイトの母は心身の病気に掛かり、亡くなっている。
ナイトに沢山求婚を申し込む者はいたが、それを全て断っているのはそういう理由もあった。優しいナイトは母のように悲しませる人を生むことを望まなかった。
そしてもし、誰か一人に愛を誓ってしまうと死を恐れて母国を愛する最強騎士として最前線に立つことを拒んでしまうだろうとも思っていた。
ナイトは騎士でいるために、一人でいることが最良の選択だと考えている。
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