第2話
だがしかし、英雄騎士ナイトは、軍人としては優し過ぎた。
土埃が舞い、鉄のような嫌な匂いと火薬の焦げた匂いが立ち込める戦場に立っていたのは味方が数十名、敵は数名。
周りには沢山の仲間達が倒れていた。
ナイトの美しい心はこれ以上の犠牲は出したくないと叫んでいた。ナイトは父を戦で亡くし、母を病気で失っている。
国を守るために戦が絶えないのは仕方がないこと。だが結果の見えたこの戦にナイトは虚しさを感じていた。何度も相手に降伏するように迫ったが、敵国の兵士達はそれは国に対する冒涜だと最後の最後まで剣を握ることを止めなかった。
敵は残り、一人。
ナイトを慕って兵士になった青年が、最後の敵と剣をぶつかり合わせている。青年が押されていることに気が付いたナイトは最後の仕事をするため、重く傷付いた足を引き摺った。
愛する国を守る。愛する国で生きる人達を守る。
その中には青年も周りで倒れている兵士達も含まれていた。
ナイトは誰よりも国を愛していた。
最後の敵国の兵士を倒し、ボロボロの青年に声を掛けようとした時、味方しか立っていなかったはずのその戦地にたった一人、血を大量に流し今にも命を落としそうな兵士が青年を背後から狙っていた。
危ない!と声を張り上げ、ナイトは青年を庇うように思いきり突き飛ばす。
敵国兵士の手には、少し白く濁る液体が入った小さな小瓶があった。
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