第4話 先の見えない道の先に有るのは希望か、それとも暗雲か。

「後藤の所に行って来ました」


「報告しろ」


「はい。うちの奴等の希望者22名を連れて突入しました。どうやら皆かなり限界だったようで。それで後藤の居る部屋まで行くと争った後のようで、後藤は腹を撃たれて死んでいて、他の奴は手榴弾で吹き飛ばされたみたいで部屋中に血と肉が飛び散って居ました。それで生き残りを探しましたが見付けられませんでした。すいません」


「糞。最悪のタイミングで内輪揉めか。うちの奴等の半分を連れて管理地域全て制圧する。直ぐに準備させろ」


「直ぐに」


「あぁ、それから制圧したら向こうの徒党に入ってるガキどもも集めさせろ。少しは事情を知ってる奴も居るだろう。生意気な奴は殴っても良いが、やり過ぎるなよ」


「分かりました」


部屋から出ていくのを見届けてから煙草に火を着ける。


「あの徒党は一体どうなってんだ」


ハンター上がりの奴等が新しい徒党のボスになり、魔力持ちだからと警戒して様子見してたのが仇になったか。こんな事ならさっさと片付けておけば良かったな。


煙草を消して自分も向かおうとするとノックの音がした。


「入れ」


「失礼します。南支部のハンター職員の内山田さんが来られています。少々話を聞きたいそうで」


「分かった。直ぐに行く」


内山田か。奴なら事情を話せば大丈夫だろう。後は後藤達が他の厄介事に関わっていなければ良いが。


応接室に入ると内山田と知らない奴と護衛が待っていた。


「お待たせしました。今日はどんなご用で?」


「話が早くて助かるよ。今日の騒ぎの事を聞きたくてね。流石にこの人数が集まると事情を聞かないといけなくてね。あぁ。こちらの人の話は後でするから今は気にしないで」


「分かりました」


そして俺は今日の朝からの騒動を話し始めた。


「なる程ね。大体の事情は分かったよ。こっちの把握してる情報とも齟齬は無い。出来るだけ穏便に徒党をまとめてくれ。こっちの話はこれで終わりなんだけど、次はこちらの方からの話ね」


「はじめまして。私は冨山都市職員の伊勢内です。壊滅した後藤達の徒党と取引していた相手、もしくは善意にしていた相手や団体の情報を教えて下さい」


これはかなりの厄介事か。最悪だな。よりによって都市の職員がくる程の何かか。これは下手に情報を集めない方が良いかもしれない。それから付き合いの無い相手からの取引もさせないようにしよう。


「残念ながら俺達も殆ど情報を持ってないんですよ。彼らは去年急に徒党のボスになり、魔力持ちのハンターな事もあり情報収集も出来なかったんです。お力になれなくて申し訳ない。むしろ殆ど何も知らない俺達よりも、ハンター支部の方が後藤達の情報を持っているはずですよ」


「分かりました。では何か些細な情報でも有れば内山田に連絡してください。では私はこれで」


そしてすぐに都市の職員は護衛を連れて帰って行った。


「いやー、すまないね三橋さん。少々込み入った事情が有って突然の訪問になって。後藤達の誰かが生きてればもう少し穏便に解決出来そうだったんだけどね」


「それで向こうはどうするんだ?今は俺達が一時的に纏めるが、正直面倒だから他に管理を任せたい」


「まあぶっちゃけそれは無理そうなんだよね。今日来た職員は三橋さんが協力出来そうな相手なら巻き込むつもりで来てたからね。私からは頑張ってとしか言えないね」


「そうか。本当に後藤の野郎は疫病神だな。最低最悪の糞野郎だ」


「まあ頑張ってくれ。あ、それから後藤の弟達が襲って返り討ちにされた相手が少し分かったよ。聞いたら驚くよ」


「それは確実な情報なんだろうな?」


「ああ。実は今日正規の武器販売店に武器を買いに来た子供が居たらしくてね。確か14歳位だって話だよ。しかも魔力持ち用の武器を買いに来たんだってさ」


「おい。それは本当なのか?しかもそんなガキが魔力持ち用の武器なんて買える訳無いだろ。いくらすると思ってんだ。そいつハンターですら無いだろ?」


「そうそう。ハンターしか買えないって聞いて驚いてたそうだよ。きっと誰かから魔力持ち用の武器の話を聞いたんだね。それで諦めて普通の武器や防具を20万分購入して、現金で払っていったらしいよ。店主が心配してサービスで徹甲弾を渡したらしい。どうやら最近店から帰る客が襲われるって話があるらしくてね。そして後藤の弟達が子供を尾行してる姿を見た人も居るし、走って三橋の徒党のまで逃げる姿を見た人も居たよ。もう間違いないね」


「そのガキはなにもんだ?そんな大金を何でスラムのガキが持ってるんだ?しかもいくら徹甲弾が有っても後藤の弟は魔力持ちで装備も着けてたんだぞ?」


「そんな事私に聞かれてもね。今ある情報はこれだけ。どう?面白い情報だった?」


「正直信じられんな。こっちでも調べてみよう」


「何か分かったら連絡宜しく。こっちも何か分かったら連絡するよ」


そこでその場は解散となった。






俺は目を覚ますと、昨日買った武器を眺める。


「これが俺の武器」


手に持つとずっしりとした重みを感じる。


「これ程の武器ですら最低限の武器か。俺は本当に何も知らないな。それにしてもここは水も使い放題だし、どうなってるんだ?この水は一体何処から確保しているんだ?」


ここはスラムの中でもかなり外側にある場所だ。それなのに高さもある頑丈な金属の柵に囲まれた敷地はかなり広い。それに柵の側には木や植物が植えられていて、中の様子が見えないようになっている。


入り口は二ヵ所あり、大きめの門とその側に小さい門がある。そこから中に入ると敷地の広さに似合わない地味で無骨な平屋の建物が建っている。


中は天井も、壁も、床すらもコンクリートの用な素材だ。窓には金属の柵がはめられている。扉は全て金属で作られていて、全て魔力錠が付いている。


屋上には貯水タンクに謎の機械が設置されている。


一階の部屋に地下に続く部屋が二つあり、一ヵ所は地下に降りると監禁部屋が並んでいる。俺はここに入れられていた。奥には広い空間になっていて、此処で訓練させられていた。


此処にはもう1つ大きな扉があり、そこは直接外の庭に繋がってる。もう1つ小さな扉があり、そこを進むと実験室だっただろう部屋に続いている。


そして此処にも階段があり一階のもう1つの階段のある部屋に出る。


そしてこの建物には殆ど物が無い。水道はあるし、トイレもあるし、お風呂もあるし、コンロもあるし、食料庫もある。


ただそれ以外は屋上の謎の機械や布団と机と椅子ぐらいで他に何もない。


少し期待してたので最初はがっかりしたが、普通に考えればこのレベルの拠点なんて一生手に入れられない代物だ。


それから俺は周辺を歩き回って路上で寝ている奴等から情報を集めた。


そしたら少し面白い話が聞けた。


どうやら俺の拠点の周囲には人が殆ど住んでないらしい。原因はしょっちゅう人が死んでいるかららしい。1日経つと死体は片付けられているが、此処に近づくのはタブーになっているらしい。


これは今の俺にとっては好都合だ。


それから魔力干渉を行っている時思い付いた。もしかしたら魔力干渉中なら記憶保存みないな事が出来るんじゃないだろうか?


思い付いたら試さずにはいられない。


俺は訓練でずっと使ってたアルミ板に魔力を流す。するとアルミの素材や配列や構造がなんとなく分かるようになる。


普通はそこから形を変えたり分離したりするが、そこから更に脳に魔力を送り込む。少しづつ使う魔力を増やしていた時に声が聞こえてきた。


『要請によりシステムを起動します』


そこで突然意識を失った。






『システムを構築しました。起動しますか?』


何だ?一体何が起きている?今俺はどんな状態だ?何も見えないし、何も感じない。システムとは何だ?これを起動すれば何か分かるのか?


このままでは何も出来ないので『起動する』と念じた。


『システムを起動しました』


すると目の前に俺が持っていたアルミ板の長さや厚み、分子構造や配列、素材等色々な情報が表示された。


これがシステムなのか?一体何のためのシステムなんだ?これを使って何が出来るんだ?


取り敢えず俺は色々試す事にした。





色々試して分かった事は、念じれば色々な事が出来た。ある程度の形をかえたり、一部だけ配列を変えたり、合金の配合率を変えたり、ある程度方向性を示すと勝手に計算して自動で作ってくれるようだ。


そして目の前にはイメージ通りに完成したアルミのコップだ。


『現在の情報を保存しますか?』


おお。作った物の情報も保存出来るのか。俺は『保存する』と念じた。


『現在の情報を保存しました』


おお。では早速確認しよう。俺は『保存した情報を表示してくれ』と念じた。


『保存情報を表示します』


すると目の前にアルミ板とコップが表示され、その横には簡易情報が表示されていた。


凄い。ただ、これどうやって終わるんだ?


『システムを終了しますか?』


『終了』


『終了します。脳の活動をシステムから通常の活動に移行します』





すると俺は現実で目を覚ました。


どうやら俺の脳を使った能力だったようだ。なぜこんな力があるのか分からない。ただ、使いこなせればかなり便利な能力のはずだ。


床にはアルミ板が落ちていた。


アルミ板に魔力を流し構築を理解する。そしてコップの情報を引き出し念じる。


『形成』


するとアルミ板がゆっくりと形を変え、イメージ通りのコップが完成した。


「本当にこんな事が出来るとは」


しかし、この能力を使うと激しい頭痛に襲われるのは厄介だな。それでもこの謎のシステムが使えるようになってから、何となく出来るか出来ないかが分かるようになった。ただ、あやふやな感覚なので何でも分かる訳ではない。たまにそういう感覚が働くってだけだ。


それでもこれはとてつもない能力だ。この力があれば生きていける。成り上がる事も出来る。


でもこの力は、俺に理不尽をはね除ける力が無いと表には出せない力だ。力とは暴力だけではない。勿論物理的な力も必要だけど、権力や財力、コネや仲間の数、様々な力が有ってこそ最大限に能力を発揮することが出来るはず。


それらがなければ奴隷のような扱いか、最高でも自由の無い籠の鳥になってしまう。


それらを手に入れるために、まずは行動あるのみ。


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