第二章 アイドル作って洗脳ニャ! ②

🐾2 推しの条件も研究して、本気でアイドル作るらしいです


「しかし、〝推し〟の対象がいろいろなら〝アイドル〟じゃなくてもいいんじゃないのか」

「洗脳、マインド・コントロールで地球人を取り込むなら、なるべく短期間で広範囲に影響を及ぼせるものを作るべきです。それにはメディアへの露出が格段に多い〝ゲイノージン〟が最適かと。なかでも手っ取り早くファンをつくれる〝アイドル〟が良いでしょう」

「〝アイドル〟を作ったとして、それがニンゲンの心を掌握しょうあくできる確証があるのかね?」

「だからリサーチです。隊長、テレビ局に行きますよ!」

 フォンデュは今いちばんニンゲンの心をつかみまくっている〝アイドル〟をリサーチして、作戦に採用する〝アイドル〟を、間違いなく推してもらえる〝アイドル〟に最適化するつもりらしい。

「テレビ局? 私も行くのか?」

 もちろんです。隊長には〝マネージャー〟になっていただきますから、いろいろ知ってていただかないと、と言いながらフォンデュはゴキゲンで鼻歌でも歌いそうな勢いだ。不安を隠せないタンデュの脇で新人のパンシェが目をキラキラさせていた。タンデュの許可をもらって一緒についていく。


 テレビ局には他にプリエ隊員とピケ隊員も同行した。〝ネコ〟になりすましたように、全員変身してニンゲンになりすまし、さらにテレビ局の社員のように変装している。ぷにぷにした肉球もなめらかな毛並みの尻尾も今は封印である。


 スタジオに入ると歌番組の収録中らしい。動画チャンネルを足がかりにメジャーデビューしたミュージシャンや坂道シリーズのアイドルたち、男性だけ・女性だけのポップアイドル・グループなど、さまざまなタレントたちが次々と演奏している。タンデュは瞳孔を開いて身を乗り出し、フォンデュに話しかける。

「あれも歌なのか?ずいぶん動き回るんだな。ちょっとは落ち着いてできないのか」

「あの動いているのは〝ダンス〟というもので、あんなふうに忙しく動きながら歌うのがいいらしいです。私も真似してみたのですが、なんだか楽しくなるんですよ」

 言いながら、あれが今このあたりの国で一番人気の〝アイドル〟ですよ、と小さな声で7人組のグループを指差す。胸に白とピンクのストライプ模様の大きなリボンがあしらってあるドレスはフリフリの白のパニエにピンクのパニエを重ね、まるでお姫様のよう。パールのついたソックスも可愛らしい。頭のリボンはメンバーカラーなのか全員色違いだ。

「可愛いのがいいのか」

 ノンノン、とばかりにパンシェは指を振る。

「可愛いだけじゃだめなんです。そんなのいっぱいいますから」

もちろん容姿ルックスが良くて歌がうまいのは大前提だが、覚えやすく歌いやすい楽曲・真似したくなるファッション・気の利いたトークができるコミュ力・ちょっとした芸などソツなくこなす器用さ・ファンを愛してるよーと思わせる演技力、そして憧れられるカリスマ性・・・数え上げたらキリがないほどの才能が必要なんですよ! とフォンデュは熱弁する。

「〝アイドル〟の条件をすべて兼ね備えたあのグループ。まさに究極のアイドル。我々が作る〝アイドル〟はあれです」

「いやいや、同じものを作ってもダメだろう」

 タンデュの言葉にフォンデュがニヤリとする。

「もちろんです。あの究極のアイドルの上を行く、超絶最強の〝アイドル〟を作ってみせますよ」

 フォンデュの頭の中にはすでに設計図ができているらしい。

 小さい頃から美しいもの可愛いものが大好きで、美容とメイクに関しては誰にも負けない知識と腕を持つ、と自負するフォンデュは、今回の「アイドル作戦」にやりがいを感じているようで使命感に燃えていた。

(今までつちかって来た私の知識と能力をすべて注いで最上級のアイドルを作ってみせる! 妥協はいっさいしない!)

まるい瞳孔の奥に炎が見えるようである。

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