第6話 この人、プロだ
「ちょっとあんた達、その子、私の連れなんだけど」
弘美さんは、明らかに極道と言う風貌の男達に、震えるでもなくそう言い放った。
こんな時に冷静でいられるなんて、やっぱりカタギの人ではないんだな。
そう思いながら、私はてっきり弘美さんの仲間だと思っていた男達を見る。
仲間ではない?
内部抗争?
「あ? なんだ姉ちゃん、イキガっちゃって」
二人はニヤニヤと獲物を物色するような目で弘美さんを見ている。
「紗代ちゃん、こっちに来て」
弘美さんが、私に手を差し伸べるけど、思わず手を引いてしまう。
「ねえ、どうしたの? 紗代ちゃん、どうして? 私を避けてる?」
私はもう、誰を信じたら良いのか解らなくなってしまった。
そんな時、金髪の男が私に襲いかかると、羽交い締めにして連れ去ろうとした。
「まったく、あんた達は口で言っても解らない人たちみたいね」
弘美さんはそう言いながら、もの凄い速度で何かを投げつけると、金髪の男は手を抱えながら悲鳴を挙げた。
私の顔に、男の血が少しだけ付くと、反射的に弘美さんの方へ走ってしまった。
「もう、どうして突然逃げ出したりしたの? びっくりするじゃない」
そう言った弘美さんの髪の毛は、まだびしょびしょのままだった。
「・・ごめんなさい」
それしか言えない私。弘美さんの手には、小さなナイフが握られている。
この人、プロだ。
私は直感した。
こんな場面で投げナイフで対応する人、ましてや私が羽交い締めにされている相手の手の甲を正確に射抜くテクニック。
弘美さんが、手に握ったナイフを複数彼らに見せると、男達は黙って引き下がる。
弘美さんは「荘司にバカって言っといて」と、友人と別れる時のように叫んだ。
私は、前にもこんな事があったなと、懐かしい記憶を辿っていた。
あれは、私と聡子ちゃんが友人になって1年くらいした頃、今回みたいに抗争グループに私は誘拐されたんだ。
あの頃は、小郡組もまだ構成員を沢山抱えている一家だったから、もう大騒ぎになった。
組員が総出で私を捜すけど、手がかり一つ掴めない。
そんな最中、抗争相手側から私の身柄と引き替え条件が提示された。
真っ当な極道が、当然飲み込めるような内容ではない。
シマの全てと身代金の要求だ。
激昂した組事務所に、一人の少女が訪れる。
「嬢ちゃん、今、取り込み中なんだ、紗代お嬢に用なら・・・・お前」
詳しくは教えてもらえなかったけど、その時組事務所に現れたのは小島 聡子ちゃん。
手には小学生が絶対に手にしない武器を持っていたんだって、後で聞かされた。
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