第53話番外編/旅番組を宇宙人と
二人して手を繋ぎ、手を片方あげて小さくふりふりする。
「地球のみなさん、初めまして。
CMなどで知っている方にもまた会いましたね。宇宙人であり異星人のナターシャです。ルビー家の長女でもあります」
「ルビー家の次女、エマ。ぺこり」
エマは淡々と可愛い自己紹介をする。
どこでこんな可愛いしかないものを覚えてきたのだろう。
ぺこりはいい。
「かわいいなうちの妹は」
たまに己の容姿も似たようなものだとつい忘れて、身内の容姿に惚れ惚れしてしまう。
「いやーっ。我々は歴史的にも珍しい事態に遭遇してしまったみたいですね!ねえ、ジローさん」
「ええ。本当に。ゲスト参加ですが、たった今出演をその場でオファーしたら良いと返事をもらったのですよ。前から予定していたわけではないので本当に驚きです」
「旅番組で宇宙人となんて、夢みたいですね」
「質問したいことがたくさんあります。歩きながらおしゃべりしてくださいますか?」
エマとナターシャはジローの会話に頷く。
おお、とスタッフはどよめく。
ここまでフレンドリーな宇宙人は、極めて珍しいなと話題になり出す。
「今までこういう風に出演した宇宙人っていましたよね?」
流石に驚きがいき過ぎている。
疑問をぶつけるとははは、とスタッフを含めた人たちが苦い笑みを浮かべていた。
なにか、気まずそうだ。
「美人すぎる宇宙人の時もオファーしたらあまりに人が殺到して、怒って地球を出てしまいまして」
「え」
ナターシャはびっくりした。
そんなことがあったのかと。
「ナターシャ、どうやら美人すぎる宇宙人はフエル人」
「あー、フエル人かー、ならさっさと出ちゃうね」
エマが検索したのか、なにがあったのかと時系列をまとめて説明してくれる。
フエル人は、地球の架空存在でいうエルフの見た目に一番近い。
それに、美しいので過去奴隷として捕まえられ続けた歴史もある。
人に詰め寄られてまた奴隷にされたり、連れて行かれるかもしれないと不安になってしまったのだ。
「フエル人と言うのですか?なにも語らず、ただ怒っていたのでだれもなにも聞けなかったのですよね」
「フエル人は奴隷として美しさで悲惨な時代を通っているので、人一倍、誰かの反応に怯えているのだと思います」
「それは、申し訳ないことをしましたねぇ」
俳優ジローは、カメラに向かって美人すぎる宇宙人として有名になった人へ、謝る言葉をかけた。
「我々はただ、あなたのことを知りたかっただけなのです。少なくとも地球はあなたにまた来て欲しいと望んでますよ。いつか会えたらわたしと散歩しましょう」
さすがベテラン。
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