第52話番外編/散歩番組飛び入り参加

妹も父も母も、宇宙人とテレビで、言われようが動画で言われようが何とも思ってない。


ただの呼び名だ。


花を花と呼ぶようなもの。


本当の名前があるから、違う呼ばれ方をしたとしても意味を感じていない。


明らかに悪口だというものは感じ取れるが、相手の呼称についてはただ呼ばれているだけ、というのを理解しているので何も言うことは無い。


「そうですか?それはよかった」


周りの空気も緩む。


すると、おずおずとこちらへ来て取引を持ちかけてくる。


「よろしければ、参加していきませんか。ゲストという形で」


「え!」


「ねーね、どういう意味?」


「あのね、今テレビに放映するものを撮ってるんだけど、それに映りますかってこと。動画で撮影するのと同じだよ」


「ゲストで参加って何?」


「私たちを番組に呼んでくれるって意味」


「あの人、ジローという人と一緒にいれる?」


「うん」


「じゃあ、やりたい。近くで観察」


参加したいと言い出す妹にどうしたものかと悩む。


こういう時は、親へ電話するのが一番だ。


早速母に連絡して事の末を伝える。


『いいではないか!楽しそうだ。母も参加したいくらいだぞ』


母まで来たら、混乱の極みだからやめてほしい。


連絡を終えて、スタッフたちに話しかける。


彼らは終始ニコニコと上機嫌だ。


「母から出てもいいと許可を得ました」


伝えるとワッと歓声が上がる。


「やった!」


「よし!よし!ルビー家姉妹が同時にテレビに出るなんて初だろ!?」


「ああっ。彼女達は芸能界に露出したことはない」


「CMだけだし、あれは自費の撮影だから、他番組じゃ初出しだ」


彼らはとにかく、撮れ高に期待を込めてキラキラと瞳を輝かせている。


「すごい、すごいぞっ」


気持ちはわかる。


ナターシャとて、同じ立場ならば宇宙人が出る番組に齧り付いて、見た日には世界史が変化したと察する。


それくらい、不思議なこと。


しかし、宇宙人自体は地球に来ているのは普通のことになっているこの星。


今更自分らがいても、別に珍しくもなんともないような気がする。


他にも美人な宇宙人はたくさん地球に来ていたはずだし。


首を捻り、腕を組む。


「ナターシャさん、エマさん、こちらへ来てください」


「はい。エマ」


「うん。あの人に聞きたいことある」


あとでね、とエマに言い聞かせる。


「むう。今聞きたいことある」


撮影が始まるのだけど。


また旅番組が始まり、俳優が今日はスペシャルなゲストですよと間を作る。


そして、エマとナターシャ達にカメラが向く。

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