第44話回復作用シール

恐る恐る受け取る館長。


多分館長?


であってるよね?


館長ですかと聞くと、ええ館長です!と言われてお互い手を出して握手。


解決のためにやってきたとは言えない。


なんせ、解決できるはず運要素も絡んでいる。


例えば、妖精に100回同じことをされて100回同じ解決策をしたとして成功するかどうかなど、わからない。


それくらい妖精は性格というか、気まぐれなのだ。


それくらい酷い運とランダムに委ねられている程の、解決策。


当然のように解決する時もあれば、そんなアホなという理由でダメな場合もある。


責任者の人は慌てて今言った通りに指示して、絵を描かせる。


絵の街だから、きっとお抱えの絵師とか契約をしている芸術家とかいるんだろうね。


キュー太郎が出した電話番号にもかける。

慌てて始まる物事。


邪魔しないように置かれている変な形の椅子に座る。


芸術の街なのでこれも芸術なのだろう。


キュー太郎も頑張って毛繕いをして、それを眺めつつ、時間潰しのためにEMMA GAMEというエマ特製スマホに入っている作成されたゲームをやる。


ナターシャが待つ事2時間。


へろへろな館長がこちらへやってきて、隣に座る。


座るっていうより、倒れ込むが正しい。


隣になった相手を見ると笑うのが失敗したような顔でこちらを見てきた。


「電話してきました」


ぐったりとなる人間の様子に流石にオーバーワークだよね、と回復の護符をぺたりと貼り付ける。


可愛いクマのシールを突然手のひらに貼られた相手はびっくりして「え?」と手のひらを見る。


剥がすに剥がせない様子でナターシャは説明をする。


100円の品揃えで買ったきゃわいい系のシールに回復の魔法を込めておいたので、一日中、疲れるたびに心労が回復していくことを。


その効能に驚き、こちらを見て、手の裏を見たりと忙しそう。


「回復?えーっと、ポーションですか?」


「ポーション!ゲーム的表現ですね」


「そうですね。でも、ゲームみたいな効果ですよね?」


「永続効果のポーションみたいなものです」


あはは、と笑みを返す。


「剥がしたり他者に渡すと効果がなくなるので気をつけて下さい」


「あー、警察や政府が欲しがりそうですね」


そうはいっても販売するつもりなんてない。


ゲームと違って物理的に影響を与えるからね。


それに、商売しなくとも稼げるもん。


ポーションシールと言えるそれにより10分ほど話している間に顔色が良くなっていった。


どうやらシールの効果が出て、疲労が回復していったようだ。


白っぽい顔に赤みが戻っている。


目の下にもクマが見えていたのが薄くなっている


良かった、と再び話し合う。

私が子供だからいう顔もなくなり、知識ある宇宙人として心が迎えてくれたみたい。


「ありがとうございます。話しているうちになんとか整理できそうです。ところで先ほどから気になっていたのですが、そのシマエナガ……は鳥ですよね?」


「はい。アンドロイドの鳥型高機能生体です」


「アンドロイドというと、ロボットですか?」


「はい。ロボットです。話しますよ」


にこやかに笑う。

相手も安心した笑みを浮かべシマエナガについても話し、キュー太郎もキュー太郎で話について行く。


シマエナガというだけでレアなのに、喋るという類を見ないものに、段々慣れてきた。


「可愛いですね」


「シマエナガといって、日本の鳥です。野鳥で寒いところに分布しています」


キュー太郎はぱさりと翼を羽ばたかせ、ナターシャの頭の上で身繕っている。


身繕いを済ませた鳥は胸をふっくらさせて、孤高を気取った。


「ナターシャさんの可愛いペットさんですか?」


「どちらかといえばコンシェルジュです。執事ですよ」


執事とかコンシェルジュとか、全く何を言っているのか理解できなかった良い大人は、笑顔を見せて相手を不快にさせない方法を取る。


私も薄ら、多分理解されてないんだろうなと分かっていたから、その笑顔は理解を辞めたからこその融和の証と見なかった事にした。


人間も宇宙人も、場の取り繕い方はそこまで違わないってことだ


とりあえず相手も私も今は出来る事はないので、ナターシャはホテルへ帰宅。


その場でちゃんと帰りますねと断ってお見送りしてくれたので、無断じゃない。


焦らせる事は望んでないからね。


帰宅して目に入ったのはコーヒーを飲む父。


コーヒーや飲み物が気に入ったのかよく飲んでいる。


そうだ、と父に話しかける。


「父さん、コーヒー専門店にはもう行った??」


「まだだね」


「コーヒー専門店行かない?」


「分かった予定に入れておこう。今行くかい?」


「私はどっちでも良いよ。そうそう、疲れていた地球人に回復魔法を付与したシールを貼ったんだけど、見て欲しい」


作ってはいたので、試しに使った。


まだ誰にも見せたことなかったかもしれないと、父に見せる。


父さんはシマエナガを撫で始めるので、それを横目にシールを取り出す。


安いシールだろうと高いシールだろうと今の所なによ差はない。

父にも回復魔法が出来るので効能とか知りたい。


「可愛いね、これ。シール?というのか」


「うん。沢山買ったよ。見る?」


興味を抱いた様子の父ハインベルトへと、シールを出して目の前に置く。

可愛い系や優美系ばかり。

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