第25話どっかの王子
しかし、気になるワードが出てきたな。
「王子?どっかの国の王子か」
「む。DNAとカメラを使って、事件を紐解く」
エマは気合いを入れ、道場に設置されたカメラと最新機器を使い、母を気持ち悪さに引き込んだ、なんとか王子を見つける。
「衛星使えば。どうやら道場の外で接触したみたいだし」
サラッと衛星の画像および映像のハッキングを提案するナターシャ。
ここで地球に関する知識をようやく紹介出来る、とご機嫌になる。
カメラに映った瞬間は、SPとかボディーガードに囲まれている男が母に言いよるシーンだった。
軍艦級の傭兵に言いよるとか死にたいとしか思えんぞ。
全く庇えない。
なんとか王子をあしらう母は無視してテレポーテーションして帰ってきたというわけか。
「私と共にくるが良い」「妃にしてやる」「車に乗れば連れて行くぞ」
などというワードを吐き散らかせていた。
「失せろって言わなかったの?」
「言う気も失せたな」
「というか、妃って何時代?時代遅れなんてもんじゃないよ」
あと、既婚者を妃にするなっての。
むかつきます。
母がいくら美人でも嬉しくはないよね。
「ボコったらいいのに」
「あんなのは相手にする程じゃない。次に来たらあやつの住処を破壊して、二度と住めぬ土地にしてやるがな」
からりと笑う母が言うならば、有言実行なのだろう。
「地球の法律では現地人が地球外生命体に加害を加えたり、過度な接触を禁じている。尚、国によって法は変わる。基本的に危害を与えてはいけないと書かれている」
「地球人同士だって許されないけど、宇宙人の場合仕返しが倍返しなんてもんじゃないから、敏感にもなるかもね」
クレームを入れたらすぐに警察が動くのがその証拠だろう。
私達は守られている側ではなく、地球を守る為に地球人を切り捨てるための法律になるのはごく自然。
私が地球人だったならば、異星人にちょっかいをかけた人間に「なにしてるの!」と怒りたくなるから。
もっと過激なことを言う人だっている筈。
「だとしたら、あの王子今頃ばちばちに怒られてるかもよ?」
地球がなくなるかもしれないような、そんな力を持つ存在に喧嘩を売ってしまうかもしれないもんね。
因みに、うちは宇宙船にカノン砲的なものを積んでいるから小惑星程度なら砕ける。
「行方を追う」
あれって、ぶつからないようにするための武器だけど、そうじゃない使い方だってできるから、私達じゃない生物には是非気をつけて欲しい。
庇う理由も守る理由もないから、いざという時は救えないのだ。
「そうだね、私もどうしてるのかモニタリングで見たい」
地球を粉々にできる存在など、私たちにだって荷が重い。
リスクは負えない。
「奴を顔面認識プログラムで探し、私が処す」
「エマ!?」
「私の地球観光を壊しかねない行為をするものは誰であろうと許さない」
恐らくヘリコプターがエマのお気に入りになったのだろう。
チャーター契約するのを進めるくらいだし、テレポートがあるのに予め予約してたし、間違いない。
うーん、ま、いっか!
「見つけた」
エマが地上を探し始めて5分も掛からずに見つけ出した。
映像を見やすいようにテレビに映す。
テレビは買った、70インチだから見やすい。
「大型テレビは見やすい。王子も見える見える」
「王子が好き勝手してる。潰す」
エマが黒いオーラを撒き散らす。
「エマ、落ち着いて」
取り敢えず落ち着かせ、続きを見る。
なんとか王子のそいつは、見た目は15.16に見えた。
端的に言えば子供って見た目。
母にプロポーズ(?)した割に恋愛のれの字も知らなさそう。
王子は王子でも、長男でもなさそう。
周りのボディーガードには金が掛かってそうだ。
あのSP達は簡単に蹴散らせるとして、公衆の面前でボコボコにすると人聞きが悪い印象になる。
ということは、誰もいないところに連れていって、知られないようにやるしかあるまい。
先ずは我らの宇宙船にご招待、のちにボコボコにし、完璧に回復させ、見た目は綺麗に直す。
治すではない、直す。
誤字じゃない。
「ふんっ、ふんっ」
謎のバーベル上げ。
母が嬉しそうにウォーミングアップしている。
「気合い入ってるね、母さん」
「なに!愚かなものを教育するのが楽しみなだけだっ」
母の教育は肉体言語だもんね。
うんうん。
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