第23話携帯獣をしたくなった

雪国の祭りは後でにして、今はもう携帯獣をしたくて、頭はそれで埋めつくされる。


「じゃあ、準備するアプリにしてインストールしておく」


「わー。楽しみで体が浮き上がりそう」


「自転車の付与は、まだかかるから。これで時間を潰すのも良い。エマもやる」


「エマが一緒ならなんでも楽しいよ」


一緒に遊びたくて、頬を赤く染めている。

体験型フルダイブVRを起動して、エマの作った携帯獣シャインへ移動する。

ゲームからゲームの移動は可能なのだ。


携帯獣のゲームの中に入った私達。

タイトルロゴがデカデカと浮いている。


「ロゴのデザイン良いねえ」


「シャインだから太陽を採用した」


「夏っぽいイメージがあるから、暑いとか?」


質問じゃなく、独り言。


「えーボタン押す」


「Aボタン?VRにボタンの概念ないよね?」


「これは伝統を引き継いで、そういう感じにしておいた」


押す意味はないけど、押せと言うことなのだという。

とりあえずスタートボタンを押す風のところ触り、携帯獣ワールドへ。


「よく来たな、妹よ」


「え?だ、誰?」


「主人公の兄」


「兄?白衣着てるってことは、携帯獣博士ってこと?」


「そう。主人公は三つ子の末っ子」


「三つ子に末っ子の概念ってあるんだ?」


「3人は互いを対等に見ているけど、戸籍は決めなきゃならないから、世間的には必要」


「そりゃそうだ」


あはは、と笑う。

三つ子の兄が携帯獣博士なのだと言う。

具体的には携帯獣の研究所の職員。


「主人公が大体15歳だとして、兄は20歳くらいかな」


「三つ子を可愛がってる。良い兄」


兄の博士は携帯獣の説明を始める。

それを聞き、私達は白くなる視界に目を閉じて、自室から起こされるというプロローグが始まる。


「ナターシャ、起きなさい」


母が起こすと言うありがちな始まり。

家の中は携帯獣がちらほら。


「三つ子の二人も起きてきた」


2人を見ると外見が違うから一卵性。


「今日はお兄ちゃん、居ないね」


「いくらなんでも研究所で寝泊まりって、仕事に取り憑かれてるにも程があるわ」


姉妹の会話を聞き、母親は今日は携帯獣をもらえる日だから、もらいに行けと元気よく伝えてくる。


「行くわよ」


身支度を終わらせて、私たちは研究所へ行く。

行くと言っても徒歩20秒。

建物に入ると兄が出迎えて三つ子に携帯獣の贈与を説明して、選ぶように言ってくる。

テンプレートなので火、水、草タイプがいるのだが、デザインが良すぎる。

でも、私……進化後の姿で決めるタイプなんだよね。

なんせ、最終進化と永遠に過ごすことになるから、進化前で選んでもすぐに進化しちゃうんだよ?


「エマ。進化後のデザインみたい」


「これ」


「私のこと分かってる」


すかさず表示されるデザイン。

阿吽の呼吸。

御三家の進化後はどれも良い。


「よおし、この子にする」


三匹のうちの一匹を手にした。

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