【第7話】BAR. KUMANS🥃
◯至福の時間
時間は流れた…
不時着してから、
同じ時間であっても…
それぞれに時間が流れたと
みんな感じている事だろう。
「クマンズ(#kumans)が一番幸せかも知れないな!」
〜ふとクマズ(#kumaz)が心の中でつぶやいた〜
みんなから離れて自分の世界を作ると決めた彼は、この数ヶ月間、自分の隠れ家作りに没頭していた。クマンザ(#kumanza)が定期的に手伝いに来ていたが、一体何を作ろうとしているのか見当もつかなかった。ひたすら石や木を船室の中に運んでは並べている。
「クマズンを呼ぶしかないかな?」
自分の音波移動装置では限界がある、大きな石板を入れなくてはならないからだ。
…………………
翌朝クマズン(#kumazun)がやって来た。
「その石ってのはどれですか?」
2人は数キロ離れた小高い丘に、推進装置を使って移動し、無造作に置かれている石板のところまで来た。
「この3枚じゃ」
地面に埋まっている一枚が妙にデカい。
「えぇ〜これはデカいですね」
「何に使うんですか?」
クマンズはここまで来たことが嬉しくて、返事をする事さえ適当になっていた。
「ところで、この3枚の石板は移動出来るかい?」
「1枚ずつなら大丈夫ですよ!」
クマズンは石板に向けて、両腕に付けた音波増幅装置のメモリを3にした。メモリは最大25まで付いているが、いきなり空中に上げたら壊れるので、かなり弱いモードで照射し、上空に持ち上げた。
時間は掛かったが、3枚とも問題無く船室に運び入れる事が出来た。クマンズが欲しかった青い石板が中央に設置された。
「この青いヤツは何に使うんで?」
軽く叩くながら、
クマズン(#kumazun)が聞いた。
「まあ、出来てからのお楽しみじゃよ!」
クマンズの中には完成図があるのだろう。それもみんなをびっくりさせたいモノを作りたいのかも知れません。今日は一番の大仕事が終わったらしく、終始御機嫌だった。
「おおそうじゃ!
今日は夕飯でも食べていってくれよな!」
既に遠くの山なみに太陽は隠れてしまってた。クマズンとのひと時は忘れられない思い出になった事だろう。
…………………
翌朝早くからクマンズはレイアウト通りに組み始めた。自分のイメージはまず根底に「みんなに楽しんでもらう事」がある。もう暗くてジメジメした、あの船室みたいなのはコリゴリだった。でもクマズグループの長老として、文句が言える雰囲気でも無かったのは事実だったけど…
実際みんながどう思っているのかはわからないが、
〜多分わかってくれてるじゃろう!〜
そういつも自分に言い聞かせていた。
やはり気持ちは盛り上がっているが、なかなか終わる代物ではない。今までの船室の入口は機械的な冷たいイメージだったが、今度はそうはいかない。多少セキュリティは落ちてもオープンなイメージを考えている訳だから…
〜今日はこの辺までにしておこう〜
だいぶ全体像が見えてきた感じだ。クマンズは天井にも床にもこだわっているようだった。星あかりと月あかりが、ここに入る様に作りたい、そしてみんなに喜んでもらいたい。
そう考えている時間がなんて幸福なんだろう。今まで味わった事のない至福の時間だと、つくづく思った…
◯最初の訪問客
あれからどれくらいの時間が経ったのか、一心不乱に作業に取り組むクマンズには気付いていないでしょう。
〜何やら季節が変わってしまったかもしれんな〜
もうすでに、植物たちは生命活動を一旦やめる時期に差し掛かっていた。クマンズは外に出て「BAR」の全景を見ていた。
〜終わった、嬉しい〜
時間は掛かったが、充分満足した様子のクマンズは、なぜか心にグッと来るものがあった。
〜どこか懐かしい〜
〜こんな感覚どこかで味わってるな〜
不思議な感覚は誰にでもあるでしょうが、大仕事を終えた宇宙熊にとっては、感無量だったのでしょう。
例の秘密の飲物、いや最高の飲物は全て格納庫にしまった。その棚を作るのにも苦労した様だった。
〜あれは何かの果実を
長い事熟成させたに違いないな〜
兎にも角にも、明日のオープンに向けて案内文を考えないといかんと、早々に船室に戻っていった…
………………(^。^)……
オープンは夕刻だった。
〜本当にみんなが集まる場所が出来た〜
〜嬉しい😃〜
そんな気持ちが一番なクマンズにとって、気楽に来てほしいって言うのが正直なところだった。
「ガチャ!ガチャ!」
「あれ閉まってるよ」
〜しまった!鍵しっぱなしだ!〜
「お〜い悪い悪い!今開けるよ」
〜ドアが開く音は低く重厚だった〜
「いらっしゃ…
アッ!おまえ? 」
「やってますか?」
最初のお客は
陽に焼けた顔をした
かつての…
〜クマル生きてたのか?〜
〜しばし沈黙が続いた〜
「クマル…おまえ?」
〜心配かけるなよホントに〜
◯KUMAZ DREAM
無事に開店まで漕ぎつけた「BAR KUMANS🥃」最初のお客は、無人島に流れ着いていたクマル(#kumaru)であった。クマンズが何より心配していたやつでした。クマンズにとっては、ある面最高の、最初の訪問客だったのかも知れません。
話し下手のクマル(#kumaru)も、嬉しそうにカウンターに座ってクマンズから注がれる例の飲物を味わっていた。
「無人島にあった果実の香りがします」
〜そうだ、おまえは無人島にいたんだな〜
〜と言う事は、あの飲物は何なのだ?クマンズたちにはわからない代物だったが、あれだけ風味があって美味しいのだからいいでしょうって、勝手に思ってしまったマスタークマンズだった〜
………………
無事にオープン出来たクマンズにとって、
こんなに幸せな瞬間は無かったでしょう。
それぞれの宇宙グマのクマズチーム、もとは同じ生命体から分かれた存在。どの惑星に行っても、何が起きようが、自由を求め、幸福を求め、そしてDREAMを求めていきたい、それが彼らの「KUMAZ DREAM」なんですね。
これからこのお店に
数々のお客が訪れる事を
そして多くの幸せが訪れますよう
心より期待しています。
…………(^○^)
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