第20話 紹介 その一
永野からの指示
1943年2月上旬。内閣では女性下士官および女性将校の養成学校創設に関する議論が続いていた。
そんな中、永野修身総長は園田一花と井上胡桃を執務室に呼び、連合艦隊旗艦「大和」に行き、山本五十六や彼女たちを知る将校たちに挨拶するよう命じた。
「二人とも、このまま待っていても仕方がないだろう」
永野は穏やかに話し始めた。
「大和に行き、山本長官や、君たちを知る人々に挨拶してきなさい」
「はい、ありがとうございます、総長」一花はすぐに応じた。
「山本長官や宇垣参謀長、それに黒島首席参謀にお会いするのは久しぶりですし、井上を紹介してきます」
「ありがとうございます、総長」胡桃も少し緊張しながら答えた。
「あの山本五十六大将にお会いできるなんて、感激です!」
永野は軽く頷き、笑顔を見せた。
「うむ、軍用機を手配する。間に合えば渋野君にも会えるかもしれんぞ、井上君」
「本当ですか?」胡桃の目が輝く。
永野は肩をすくめながら言った。
「まあ、行ってみることだな。とにかく君たち自身の目で確かめてこい」
大和への道
こうして二人は空港へ向かい、手配された軍用機で広島まで飛んだ。そこから広島港に停泊中の戦艦「大和」へ向かう。
「これが戦艦大和かぁ……すごく大きいね」胡桃は目を丸くして驚嘆した。
「そうね。私たちの時代には、戦艦なんてもうないものね」一花がしみじみと答える。
「この艦が連合艦隊の旗艦で、中に山本長官がいるんだよね?」胡桃が期待に胸を膨らませて尋ねた。
「ええ、何か特別な用事がなければね。行きましょう、胡桃」
艦橋への到着
艦橋前に到着すると、二人は下士官に声をかけられた。
「ここから先は艦橋です。許可のない方はお通しできません」下士官の厳しい口調に、胡桃が一瞬戸惑う。
「私は軍令部所属、園田一花中尉です。そしてこちらは井上胡桃、軍令部所属の次期少尉です」
一花が毅然と名乗りを上げる。
「永野修身総長の命で、山本五十六長官にお会いしに参りました。お取り次ぎ願えますか?」
下士官は敬礼し、「お待ちください」と言い残して中に消えた。
「次期少尉って……一花?」胡桃が小声で尋ねる。
「いいじゃない。細かいことは気にしないで」と一花が笑って返す。
岡本との再会
少しすると艦内から見慣れた姿が現れた。岡本晃司だった。
「やあ、二人とも。永野総長から山本長官を通じて連絡が来てるよ」
「晃司さん!」一花が嬉しそうに声を上げた。「お久しぶりです……というほどでもないのかな?」
「岡本さん、渋野さんはもう出発されたんですか?」胡桃が尋ねた。
「ああ、先日ここを発ったよ。永野総長を通して連絡が行っていると思ったけど」
胡桃は少し落胆した表情を見せたが、「そうでしたか……」とだけ答える。
「忠和なら心配ないよ」晃司は彼女を安心させるように言葉を続けた。
「長田さんと加古川さんも一緒だし、任務はしっかり進むはずだ」
作戦室での対面
岡本に案内され、一花と胡桃は作戦室へ向かった。そこには山本五十六の姿があった。
「よう、園田中尉」山本が朗らかに声をかける。「久しぶりだな。そして君が井上君か?」
胡桃は緊張を隠しきれないまま、丁寧に名乗った。
「初めまして、山本長官。井上胡桃と申します。後世でも閣下のご高名は伝えられております。お会いできて光栄です」
「そうか、そんなに私の名前が有名なのか」山本が微笑む。「そして君は園田中尉のルームメイトでもあるそうだな?」
「えっ……?」一花が不意を突かれたように呟く。
山本は意味深な笑みを浮かべて続けた。
「永野総長から、君たちの計画――女性下士官、女性将校の養成学校創設について聞いているぞ。井上君、君もその初期メンバーとなるだろう」
山本の発言に驚きを隠せない胡桃と一花。
その場で山本は宇垣参謀長と黒島首席参謀を呼び出し、改めて彼女たちを紹介する手はずを整えた。
未来と現在を繋ぐ異例の計画が、いよいよ動き出そうとしていた――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます