第11話 花壇の花食うより牛丼食ったほうが旨いから牛丼食ったほうがよくね


  この汚い街を少し歩いてみた。


 悪くないな。


 うん?


 街の中の花壇の中に、比較的綺麗な青年がいる。


 「あんた、花壇の中で何してるんだ」


 俺は、気になったので、訪ねてみた。


 「俺さ、花が好きなんだ」


 「花の名前とかわからないけど」


 「花って、いいよな」


 「そうか」


 「お前も花が好きな人なんだね」


 「いや、花なんて興味ない」


 「えぇぇ」

 「花、興味ないのかい」


 「うん」


 あ、比較的綺麗な青年は、花壇の花をおもむろに引き抜いた。


 「花壇の花、抜いていいのか」


 「いいんだよ」


 花を抜いた男は、花を口に入れた。


 「だって、花は食べられる時が1番綺麗なんだから」


 「そうか」

 「そんなものか」


 「花壇の花、抜いたり食ったりするのはよくない」


 スリ男Aが口を開く。


 「うん、そうだね」

 「スリもよくないし」

 「花壇の花を抜いたり食べたりするのもよくないね」


 スリ男A君は黙ってしまった。


 都合が悪くなったから黙ったんだな。


 「君もそう思うだろ」


 「いや、まったくそう思わない」


 あ、男はまたおもむろに花壇の花を抜いた。


 「食べてみな」


 「食べられるその時の花の綺麗さがわかるから」


 こう勧められてみると、断るのも無粋だ。


 「それじゃ、俺も一度嗜んでみるか」


 人生、何事も経験してみるものだ。


 手渡された花を口にする。


 うん、食べられる時に花が1番綺麗だとか、まったく理解できないわ。


 とりあえず、花を咀嚼して飲み込む。


 うん、牛丼の方が旨い。


 「牛丼の方が旨いからさ」


 「牛丼食ったほうがよくね」


 「それは、そうだよ」


 「俺は花が旨いから花を食べるわけじゃないんだ」


 「そうか」


 「とりあえず、あんたは花壇から出ようか」


 「嫌だ」


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