善き学園生活のためには

ドリャア丸

第1話

The road to hell is paved with good intentions.


地獄への道は、善意で舗装ほそうされている。

______________________________________


 僕は善意で行動したことがない。…いや、たぶん。


 まあ、自分の過去を鮮明に覚えている人間など、そう多くはいない。

 僕もその例に漏れなく、自分の過去など一々いちいち深く覚えてはいない。



 唐突に何を言っているんだと思うかもしれない。

 なぜ、僕がこんな突拍子もないことを言い出しているかというと、それはひとえに目の前の茶髪の美人さんのせいだ。


 肩ぐらいまで伸びた髪は太陽に映えて、明るい顔つきで周囲を魅了する。

 そんな、このひとは僕たちの学年の絶対的マドンナらしい。

 そのあだ名の人魚姫の由来は、演劇で演じる人魚姫役がとても似合っていることからだそうだ。

 その美貌には他学年の先輩たちも注目している。って、隣で同級生の誰かがしゃべっていた。



 で、そんなひとが僕になんで話しかけてんの??



 ――なんか、昨日、コンビニでチンピラ達に絡まれていたのを僕がスルーしたのが、許せないらしい。

 それで僕に

「あんたに善意ってのは無いの!?」

 的な感じでキレてきている。

 それで、僕の頭の中に冒頭の独白が出てきたわけだ。


 というか、キレるなら絡んできたチンピラ達にして欲しいんだが…。


 僕はただ眺めてただけじゃん。いや、助けろよってことでしょ。

 確かにその通りなんだけどさ。

 僕としては店の中から店長が出てきてたし大丈夫かなって思って。

 しかも、僕が帰っている方向にチンピラ達が走り去っていったところから察するに、何もなかったってことでしょ?

 それより、こんな衆人環境でキレないでくれ、僕の心は小市民なんだよ。


 とか思っていたら、僕のことをにらみつけて走り去っていくではないか。

 ちょ、ちょっと待って、このままだと僕が加害者みたいになっちゃうじゃん。

「あいつ…」

「あの男、佐藤さんにそんなことを…」

 へえ、佐藤っていう苗字なんだ…。

 というか待って、僕は何もやってないから!お願いだからそんな目で見ないで!


 まあ、さすがに僕も周りに加害者だと思われるのは嫌だし、一言

「助けようとは思ったよ」

 と言っておく。




 嘘ではない。――――――ただ、善意では動きたくなかっただけだ。


------------------------------------------------------------------------------------------------



 昼休みの災難を乗り越え、僕は学園祭の準備を始める。

 放課後は家に直帰するのが僕の日課だが、学園祭の空気には勝てなかった。

 同級生のみんなも高校に入って初めての学園祭だからか、異様にテンションが高い。なんなんだ、こいつら。



 まあ、備品の部署に配属された僕の仕事は大したものではない。

 死にそうな顔で働いている実行委員さまには遠く及ばない。

 僕に割り振られたのはせいぜい、備品表の作成と、全備品の確認と、当日の備品管理くらいだ。



 ……多くない?これ絶対一人でやる量じゃないって…。


 でも、この程度なら一人でもやれるかな。

 ん?友達はいないのかって?―――察してくれ。僕はガチガチの陰キャなんだ。

 作れるものなら、とっくの昔に数人くらいは友達を作っていた。



 というわけで、同じ部署の同級生の手は借りられない。

 しかし、僕の事務能力をもってすれば、これくらい成し遂げられるはずだ。

 そして、僕は”からには完璧に”がモットーの人間。

 このくらい、完璧に仕上げてみせる!!





―――やっぱり違った。


 確かに冷静に考えてみると、一年生にやらせる仕事の量じゃなかった。

 出来上がった書類を備品チーフの先輩に渡して

「これ、備品の部署の仕事だよー」

 と言われたときは、思わず呆然としてしまった。



 ただ、僕の書類で備品の仕事の大半は片付いたらしい。

 だから書類を作るという仕事をした僕には、当日は何の仕事も割り当てられないらしい。つまりは、先輩からの「一年生は学園祭楽しみなよー」というメッセージなのだろう。




   、なんということだろう。僕には友達がいない。

 一人で学園祭をどう楽しめというのだろうか。いや、楽しめない(反語)。



 僕は中学校の時も同じ苦しみを経験してきた。そんな僕は断言できる。

 少なくとも僕には一人で学園祭を楽しむという離れ業はできない。

 僕のこれまでの学園祭のルーティーンは、好きな食品の出し物をまわって…割り振られた仕事をして……それで終わりだ。

 嘘だろって思うじゃん?僕もそう思う。



 だから、僕は学園祭で割り振られた仕事を他人の分もやることにした。

 これまでもそうだったし、これからもそうする予定だ。

 こうすれば、本来仕事があるはずだった生徒は友達や恋人とまわる時間が増えてハッピーだし、僕も余りにも暇すぎる時間を潰せてハッピー、win-winじゃないか。



 そう先輩に伝えたら

「一年生の仕事は楽しむことなんだよー。というか、君は働きすぎだから本番は休んでよー」

 と言われた。

   



 仕方がないので、当日は一人で勝手に当番をさせてもらおう。

 なに、誰も困ることはない。僕に休みをくれた先輩には悪いが、こちらにも致し方ない事情があるんだ。



 ちなみに、クラスの出し物は佐藤さんのクラスと同じ演劇だ。

 クラス全員参加なので、他人の分もやるというのはできない。

 なんか、一年のクラス同士で別の演劇をやって、一番上手だったクラスを決めるらしい。今は、佐藤さんのクラスがぶっちぎりで強いらしいけどね。



 閑話休題それはさておき、僕の学園祭の過ごし方は大体決まった。

 まずは、おいしそうな食品の出し物をまわり、クラスの出し物の演劇をする。

 それが終わったら、あとは備品確認をひたすらしよう!



 うん、完璧な計画だ。これで、学園祭の二日間を乗り切ってやるぞ…。

 もう、学園祭まで一週間は切ったし、特別大きな変更点はないはずだ。


=====================================================


 初めまして、ドリャア丸です


 今までいろんなラノベを読んでくる中で、自分でも書いてみたいと思い今回初めて投稿させていただきました。この作品は週二回のペースで投稿をしていく予定です。


 至らぬ点も多いと思いますが、温かく見守っていただけると助かります。感想、レビューお待ちしております。あと、できたら★で評価してもらえるととても嬉しいです。

 追記:見やすくしてみました。2025/2/28

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る