第3話 言わなかったことの後悔

「――え?」


思わず聞き返してしまった。


好きだった? いやいや、そんなはずないだろ。俺はずっと避けられていた。無視されたことだって何度もある。どう考えても嫌われていたはずだ。


「……今、なんて?」


俺の声が少し震えているのが、自分でも分かった。


電話の向こうで、華乃が息をのむ音が聞こえた。


「……好きだったの。ずっと。」


俺は言葉を失った。


「でも……私、バカだから、うまく話せなくて……気持ちを隠そうとしたら、避けることしかできなくなって……。」


言葉を詰まらせながら、華乃はゆっくりと続ける。


「高校が別になって、もう会えないと思ったら……後悔した。」


後悔――。


そんなこと、俺は考えたこともなかった。俺がずっと華乃に避けられて苦しい思いをしていたみたいに、華乃もまた、違う形で苦しんでいたってことなのか?


「だから、こうして……やっと話せた。」


俺はスマホを強く握りしめた。


「……俺、ずっと華乃に嫌われてるって思ってたよ。」


「……ごめん。」


電話越しの声が、小さく震えている。


「でも……今は?」


気づけば、俺の口からそんな言葉がこぼれていた。


「今も……俺のこと、好き?」


一瞬の沈黙。


そして――


「……うん。」


その小さな声が、確かに俺の心に届いた。

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