第32話 カプリエルを拷問

 魔物と魔人の襲来は国の大きな話題となり、魔族領とルークス王国の平和条約が壊れそうになっていた。

 魔族領の言い分としては革命軍と言う名の魔王軍と民主主義者たちの間で対立が起こっているのだとか。

 魔王は魔族に対する冷遇が許せず、戦いで負けた借金や軍事力の抑制などで魔族経済の成長が止まっている点を懸念し、鬱憤が溜まっているのだとか。そんな喧嘩、国同士で勝手にやってほしい。市民を巻き込まないで。


 王都を襲った魔族はエルツ工魔学園の生徒を誘拐して逃走。行方をくらませている。見つけ次第拘束しなければならない。

 魔人や魔物による死者はゼロ。怪我人多数。


「よかったね、カプリエルちゃん。人は死んでないみたいだよ」


 私はエルツ工魔学園に戻らず、師匠と共に過ごした小屋まで『転移魔法』で戻っていた。

 一日経ち、近場の街で買った記事を読みながら師匠が作った訓練場の地面に張りつけにされているカプリエルを見る。


「うぅぅぅううぅ……」


 カプリエルは私にお仕置きされており、涎と涙、鼻水で顔がグチャグチャになっていた。

 弱い刺激でも増幅されてしまう『感度上昇』の付与魔法で体の限界を超えて全身が痙攣してしまい、体が言うことを聞かない様子。

 股に擦りつけられている羽根ペンや地面が盛大に濡れている。刺激に耐えられず、老犬のように阻喪してしまったようだ。


「あぁ。カプリエル、なんて顏をしているんだ……」


 Dランククラスの寮の部屋に保管していたザウエルは通常の姿に戻っており、カプリエルの姿を見て身を震わせていた。息も荒い。何か変な気分になっているのだろうか? 美味しそうなごちそうを前に出され、唾液が止まらない犬のようだ。


「ザウエルちゃん、目の前に悪いことしちゃった同僚がいるみたいだよ。お仕置きしなきゃね」


 私はカプリエルが舌を噛み切って死なないように口に咥えさせていたゴムボールを取り外す。


「ざ、ザウエル。ど、どうしてこんなやつなんかといっしょに……」


 カプリエルは途絶えそうな意識を保ち、かすれる声で呟いていた。


「カプリエル。私は魔王様に捨てられたんだ。作戦に失敗してな。そこにいる『黒羽の悪魔』に捕まって言いなりにされてしまった。許してくれ……」


 ザウエルはカプリエルを押し倒すような体勢を取る。いわゆるマウントと言うやつだ。


「ま、まて、ザウエル、な、なにを考えているんすかっ!」

「ザウエルちゃん。カプリエルちゃんの体は物凄く敏感になっているから、優しくね。じゃないと、ぶっ飛んで死んじゃうかもしれないから」


 私は少し離れた場所に移動し『禁断の書』を取り出す。男同士があるなら女同士も悪くないんじゃないかなと言う好奇心のもと、二名の魔族による一方的な共食いが始まった。


「ごめん、カプリエル。うち、お腹ペコペコで我慢ができないんだ……」


 ザウエルは頬を赤らめさせ、唾液によってドロドロになった長めの舌を垂らす。そのままカプリエルの唇を貪り食い始めた。魔力を無理やり吸出していく。

 縛られて動けない方を一方的に食すなど、毒で動けなくした獲物を食らう蛇のようだ。


「ぷはぁっ。カプリエルの魔力、美味いな。ほら、カプリエルもうちから魔力を吸わないと死んじまうぞ……」


 ザウエルは息が途絶え途絶えのまま唇を再度密着させる。

 カプリエルの体は電撃を浴びているようにビクビクと跳ね、綺麗な水分が下半身から漏れ出していた。尻尾同士を絡め合わせ、男が見たら勝手に発情してしまいそうな光景が森の開けた場所で行われている。

 その光景を私は事細かに『禁断の書』に書き記していく。女の子同士の場面を男の子同士の場面に書き換えられたら私の『禁断の書』の質も上がるのではないか。そんな期待を胸に、同種同性の魔族が魔力をむさぼっている姿をじっくりと観察し、文字に書き起こす。だが、つまらない。


「あぁああっ~! だ、だめ、だめぇ。ざ、ザウエル、こ、これ以上は……、も、戻れなくなっちゃぅうっす!」

「う、うちはとっくに地の底に落ちているんだ。すまないカプリエル、やめたいのにやめられないんだ……」


 ザウエルはカプリエルの敏感な部分をしゃぶりつくし、尻尾の先でカプリエルの一番敏感な部分を引っ掻いていく。カプリエルの体は少しの刺激で大ダメージを負い、頭が爆発しそうなくらいの衝撃を受けているように見えた。このまま、昇天してしまうかもしれない。


「おぉ。なんて容赦がない。でも、これはこれでいいか。コルトを攫ったんだから、それなりの報いは受けてもらわないと……」


 私はザウエルとカプリエルの姿を『禁断の書』に認める。どちらかが攻めと受けを担い、愛するわけだがこの状況を利用すればもっと上手く書けるようになるのではないかと創作の核心に触れている気がする。ただ、羽根ペンは真っ白な紙の上を全然走らなかった。


「あぁ、らめ、らめぇ、ザウエルぅ……ちゅぱちゅぱしちゃ、らめっす。も、もぅ、おしっこ漏れちゃぅ。いっぱい、でちゃう……」

「カプリエル、尻尾を弄られたくらいで、もうびちょびちょじゃないか」


 ザウエルは身をひるがえし、カプリエルの顔をお尻で潰して股に顔を埋める。


「ざ、ザウエル。な、なにする気っすか。ちょ、だ、駄目……」

「なーに、ション便するのを手伝ってやろうと思ってな」


 ザウエルはカプリエルの股に悪戯を始めた。あまりにも容赦がなく、カプリエルの甘い声はザウエルのお尻に潰されてかき消されている。あっという間にカプリエルの股から大量の噴水が上がり、腰と尻が電気を浴びたように痙攣した。


「こらこら、ザウエルちゃん。カプリエルちゃんを気持ちよくさせちゃ駄目でしょ。これは拷問なんだからね」


 私はザウエルを魔力の鎖で縛った。


「お、お仕置きされちゃぅ……」


 ザウエルは私に縛られて目を完全にハートにしていた。

 私はザウエルとカプリエルを抱き合わせ、互いの足を縛る。お尻を突き出した形で固定しただけなのにキスし合っていた。発情中の鼠同士を合わせた時と同じくらい速いカップル成立の瞬間だった。密着し合っている股部分に超振動している羽根ペンの先を挟み込む。


「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああ~!」

「ぐぅううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!」


 ザウエルとカプリエルの体は縛られているので身動きは取れず、私が魔法を解くまでずーっとこのまま。拷問とはギリギリ壊れない辺りを攻めないと。


「なにこれ、なにこれぇ……。わ、わけわかんないぃっす! し、しぬ、しぬぅうっ!」


 カプリエルは脳が理解できない拷問を受け、完全に参っていた。


「死なない、死なない。ほらほら、ザウエルの魔力を奪わないと体力がなくなっちゃうよ」

「ざ、ザウエルぅ、す、すまないっす」


 カプリエルはすでに狂っちゃっているザウエルに深い深いキスを交わす。

 ザウエルはたまらず腰を建付けの悪い机と同じくらいガクガクと震わせ、白目を向く。両者共に盛大に漏らすも、震える羽根ペンは止まらず二人の体に刺激を送り続けた。


 私は『禁断の書』をじっくりと書き、ザウエルとカプリエルが意識を失うまで拷問を続けた。


「……どうしよう」


 何も書けない。楽しくて大好きなはずなのに一行も書けない。脳裏に焼きつけられたコルトの姿がちらついてしまう。

 今の私は冒険者じゃない。ましてや、魔王と戦うような命知らずでもない。師匠なら助けてくれるかもしれないと思い、やってきたがやっぱりいなかった。

 二年半ぶりに戻って来たけれど、全然変わってなかった。ただ、なつかしさや安心感は一切得られない。


「あ、あぁ、あぁぁ、し、死んだお婆ちゃんが手を振っているっす……。こっちにおいで、おいでって、呼んでるっすぅ」


 カプリエルは目を回し、脳みそが頭の中で煮詰められ過ぎて、幻覚を見ているようだ。

 私は彼女の体に冷水をぶっかけ、意識をはっきりさせる。


「カプリエルちゃんが魔物を呼び寄せて学生を攫わせたの?」

「は、半分はそうだ。でも、魔物に学生を攫わせるような命令はしていないっす」

「じゃあ、誰がそんな無駄なことをするの。なんで、わざわざエルツ工魔学園の生徒を一人だけ連れ去ったの。絶対に狙っている。狙って誘拐したなら、簡単に殺されたりしないはず」


 私はカプリエルの角を掴み、本当に心当たりがないか問いただす。さっきまでの拷問で大分従順になっているため、本気で知らない様子だった。


「ちんたらしていられる時間も少ない。魔族領はルークス王国と親密な関係でい続けたいと思っているらしいし、魔王だけがルークス王国に攻撃を仕掛けている。なら、魔王を倒せば事件は解決するのか。でも……」


 私はザウエルやカプリエルがなぜ、ルークス王国を攻めようとしていたのか、その理由を再度考えた。彼女たちは『黒羽の悪魔』を倒すためにルークス王国にやってきていた。すべて魔王の命令だというのは言質がある。

 私を殺したくて仕方がないということは、私が怖くて仕方がないということ。私なら、魔王を倒せるのか。

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