本章

第1話

 月曜日、私は一日中そわそわしていた。

 最近、月の物が遅れていた。

 昨日の夜、もしかして、と妊娠検査薬を使った。九九パーセントの確率でわかる、と書かれていた。


 一分後、二本の線がくっきり出た。

 陽性だ。


 ただただ驚いた。

 実感なんてなかった。

 彼に教えたらなんて言うかな。

 思って、お腹に手を当てる。


 彼は喜んでくれるはずだ。

 以前、彼とそのことについて話し合っていた。

 予期せぬ妊娠があった場合にどうするのか。

 彼は、もちろん結婚だよ、と言った。それどころか。


「妊娠すれば結婚してもらえるのかな。だったら今すぐ子供を作ろう! 君との子供なら何人でも歓迎だ!」

 そう言って私を求めて来るから、そうじゃない、と慌てて止めた。


 思い出して、ふふっと笑う。

 そんなことを言ってくれるくらいだから、喜ばないわけないよね。

 今日は多分、プロポーズされる。そのときに教えよう。私からのサプライズ。


 驚いた彼を想像し、またふふっと笑った。

 ちょっと順番は違っちゃったし、仕事のこととかいろいろ急いで考えないといけないことは多いけど。


 まだ産婦人科に行ったわけじゃないし、絶対のものではないけど。

 彼に言いたくてたまらない。だけど驚かせるためには会うまで内緒にしなくちゃ。




 定時になると、私は急いで帰り支度を始めた。

 夕方から雨予報だった。降り出す前に彼との待ち合わせ場所に行きたい。

 ロッカールームには、もうすでに数人の女性がいて騒いでいた。


江上えがみ課長、離婚したんだって」

 私の顔を見るなり、一人が言った。

「ほんとに!?」

 私は目を丸くして彼女を見た。

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