お願い成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~

またたびやま銀猫

プロローグ

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 彼は私を自分に向かせて、言った。

「俺、柚城一途ゆずしろかずみち三十歳は、あなた、相馬紗智そうまさち二十九歳を一生愛し、死んでも愛すると誓います」

「なによ、それ」

 私はくすくすと笑った。


 一人暮らしの私の部屋で愛し合ったあとのことだった。シングルのベッドに二人でねそべるのは狭くて、だけど彼と密着していられるその時間が好きだった。

 彼の肌がなめらかで、好き。彼の手が大きくて優しくて、好き。彼の黒い髪も優しい茶色の瞳も、低い声も、ちょっと子供っぽいところも、たまにドジなところも、なにもかもが好きだ。


「死んでもって縁起が悪いこと、嘘でも言わないで」

「紗智に俺の愛を伝えただけなのに」

 少しだけ彼がすねたように言う。

 私は彼に頭を寄せた。


「俺、君に出会ったときに運命を感じた。俺のドジはそのために必要だったんだ」

「ドジなのが運命って、あなたらしいわ」

「君は? 運命を感じてくれた?」

「運命とかどうでもいいくらいカズが好き」

 私の答えに、ふふっと彼は笑う。


「俺、紗智にカズって呼ばれるの大好き」

「友達にはイチズって呼ばれてたのよね」


「大人になってもイチズって呼ばれるんだから参るよ。この前も梶尾かじおに会ったときに呼ばれてさ、あいつ言葉選びがヘタクソで……ってこんな話どうでもいいか」

 彼は私の耳に口を寄せてささやく。


「前からお願いしてたけど、あさっての月曜日、会える? 大事な話があるんだ」

「大丈夫」

 私はどきどきした。

 つきあって一年の記念日だ。


 そのタイミングで大事な話と言えば、プロポーズかな。

 私はキスをねだるように顔を上げた。


 彼は優しく微笑して唇を重ねる。

 私は幸せだった。

 このときまでは。

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