第22話 決裂タイムリミット!
八重とトキコの口論はヒートアップしていく。
「だいたい、お前がいつも雑に彼女をとっかえひっかえするから、余計な恨みを買うんだろうが!」
「雑になんてしてないもん! とっかえひっかえなんてしてないもん! いつも真剣だもん!」
「だったら、なんでこんなことになってんだよ!」
トキコがバスケ部長霊のユニフォームに涙鼻水を擦りつけるたび、幽霊のドリブル音が教室をリズミカルに震わせる。雪姫は壁際で人体模型とテケテケに挟まれ、戦慄のバトル観戦を強いられていた。
「お前ひとりで殺されてこい!」
「なんでよっ! みんなでコックリさんやってたんだから、みんな悪いでしょ!」
「生霊はお前に用があるんだろうが!」
「ええ~……やだあ!」
ダムダムとボールを弾ませながら、バスケ部部長の霊はやんわりとトキコに語りかける。
「ちゃんと謝りましょうよ……」
「ええ~やだ怖いー! 一緒に謝ってよおおお!」
想像以上に力強く縋りついてくるトキコに、バスケ部部長の霊は本気で恐怖を覚えたらしい。
ドリブルのスピードを上げながら、目だけで八重に助けを求めてくる。
「……んあああああ! もう、付き合ってらんねえ!」
八重はバスケットボールを思い切り蹴り上げた。
それを追いかけて、バスケ部部長の霊は「あぁぁぁ!」と悲鳴をあげながら教室の隅へ吹っ飛んでいく。
その隙に、トキコの懐へ入り込み八重は鋭い視線を突き刺した。
「お前はいつもそうじゃんか!」
切り裂くような声が響く。
「人を自分のいいように可愛がって、手に負えなくなったらポイと捨てる。その繰り返し!
人に対する誠実さがないんだよ。だからこういうことになる!
挙句の果てにその尻拭いを、この国全員の命でやらせようってか。いい加減にしろ!」
「……じゃあ、どうしたらいいっていうんだよ!」
「知らねえよ!!」
八重はトキコの鼻先五センチでそう吐き捨てると、くるりと背を向けた。
そして、教室のドア付近にたむろしていた怪異たちを蹴散らしながら出て行く。
トキコも泣きながら教室を飛び出し、八重とは反対方向の廊下を走って行った。
「ここで離ればなれになるのは危険です!」
そう叫ぶべきだった。
けれど、その一言が出なかった。
教室に取り残された雪姫は、怪異たちとともに途方に暮れた。
……完全に、決裂してしまった。
それは、2025年7月の予言の成就を意味する。
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