ごめんねボクの愛しい人グッバイ~2025年7月予言の大災害を止めろ!飛梅女子高等学校オカルト研究会~

真鶴コウ

第1話 ぶっ壊れた夏より

 今年の夏なんて、もうとっくに壊れていた。


 梅雨が終わる前から、気温は常軌を逸して上昇。

 昼間、蝉の一声さえ聞かれない。

 照りつける太陽の熱はアスファルトを跳ね返し、そこに息づく命の世界を、静かに、しかし確実に蝕んでいく。

 やがて夕暮れ、黒い雲が勢いよく立ち上がると、怒り狂ったかのような雨が一気に降り注ぎ、容赦なく散っていった。


 人間が悪いのだ。

 人間が自然を大切に扱わなかったから、地球もまた、やりたい放題に反抗しているんだ。

 まあ、愛のバランスが崩れているなら、やり返されたって文句を言っちゃあいけない。


 桜田トキコは、そんな風に自分を納得させつつも、耳に届く荒れ狂う雨音に少し呆れてイヤホンをポンと装着。

 今日はどの動画で気分転換するか、タブレットを指先で軽くスクロールして時間を潰していた。


 一方、少し離れた窓辺では、山口八重やえが古びた机に脚を組み、外の大騒ぎみたいな空模様を冷ややかに睨みつけていた。トキコが「キッス」と呼ぶ、響き渡る大きな舌打ちを一つ残すと、彼女は低音が心地よい少年のような声で、ぼそりと呟いた。


「……天気の調整、下手くそか」


 セーラー服のスカートがめくりあがるのなんて、彼女にとっては微塵も気にならない。

 ここは、田舎には似つかわしくない、あの有名建築家が設計したと噂の学園校舎の裏手に残された旧校舎。

 その一階の奥まった、薄暗い教室――『飛梅とびうめ女子高等学校オカルト研究会』の部室である。


 こんな場所に足を踏み入れる者は、誰もいない。


 部員はたったの2人。

 でも、彼女たちは世界の謎を暴くため、機嫌は悪めに、ひっそりとその活動を続けているのだった。

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