ハズレな先輩が自分で作った異世界を100日間もメタメタにしちゃって僕困ってます
九里宇ユミオ
1日目「おでん戦士たけし」
四畳半の和室に丸机、コンロではブリキの鍋がコトコト煮えている。
「うん、美味しい」
ボクはおでんの味見をして、鍋蓋を脇に置いた。
「あっつ! なんでこんなところに置くんだよ!」
「だって、人がおでん作ってる横でゲームしてるんですもん」
「だからってオレのケツに刺すなよ!」
先輩と同棲して二年。いつの間にかボクが飯担当になった。それはいいけど、尻丸出しで転がられると、さすがに穏やかなボクでも鍋蓋をその“都合のいい場所”に置きたくなる。
「鍋蓋置きを壊した罰です。早く新しいのを買ってください。それまではそこが鍋蓋置きです」
「ケツが裂けちまうよ」
たけしはそう文句を言いながらも、尻をキュッと締めた。案外、乗り気である。
「さっ、熱いうちに食べてください」
「食べさせてくれよ〜」
たけしがうつ伏せのまま情けなく吠える。ボクは彼が挟んでいる鍋蓋を平手でパンと弾いた。
「しょうがないですね、口開けてください」
一番煮えていそうなこんにゃくをトングで掴む。なんだか大型動物に餌をやる気分だ。合図をすると、たけしは顔をこちらに向けずに口だけパカッと開けた。そこにこんにゃくを放り込む。
「熱っつ!!」
こんにゃくを吐き出しそうになったたけしは、慌ててスマホを放り出し、両手でこんにゃくをキャッチした。
「やっぱり熱いじゃねえか!」
立ち上がって騒ぐたけし。その手にはこんにゃく、尻に挟んだ鍋蓋。丸盾を後ろ手に、刀を構えたギリシャ兵士のようなその姿に、思わずボクは吹き出した。
鍋蓋置きを買ってくれることになったら半分だけ出そうと思った。
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