展示しよう2
翌日、一般公開の時間前に展示室に行くと、空気がおかしかった。昨日起動したままの俺たちのシステムの周りに人垣が出来ていた。
「昨日から、放電もモーターも動きっぱなしって、本当か?」
「AC電源は引いてないし、バッテリーらしきものもない」
「すると、このパネルの説明はマジなのか?」
「そんな馬鹿な話があるものか!」
審査委員達だった。前日から起動しておくようにと言った部長の策は正しかったようだ。何か悔しい。
俺達に気付いた審査委員の一人が、引率のサーカスに話しかけた。
「この機械ですが、貴方の研究指導に基づくものでしょうか?」
「え?」
「論文化しますか? それとも特許を取得する予定でしょうか?」
「いや、その」
「いや、分かりました。今は公にできないのですな」
「?……」
「今年の恩賜◯念賞は、もう決まりでしょうな」
他の審査委員もサーカスを取り囲んで、名刺交換を始めた。サーカスは、意味も分からずに、アウアウしていた。
他人が困惑しているところを見ると、自分の同類を見つけたようで何か安心するもんだなぁ……。
「何かトリックがあるはずだ! 調査を要求する!」
他校の引率教師が怒鳴っている。普通そう思うよね、と俺はその先生に仲間意識と同時に同情を感じていた。でもな、俺がどんなに調べてもカラクリが分かんなかったんだよ……。
「……どこをどう調べる? 分解されたら、展示できない」
健太がもっともなことを聞いた。
「それなら、すぐ隣のうちの大学にCTがあるから、それで内部構造の3D映像を撮るというのはどうかね? 一時間もかからんだろ」
何か偉そうな審査委員のおじさんが言った。大学の場所から多分T大の人だ。
一時間後、PCの画面に断層写真と再構成立体像を見せながら、審査委員のおじさんは説明した。
「結論から言うと、どこにもバッテリーを隠せるような隙間はおろか、バッテリーを思わせる電子密度の部分も無かった。見た目と同様に、モーターと配線以外に金属はみつからなかった。電線で繋がっていない最下層の板には金属が一部使われていたが少量だし、そもそも上層に繋がってないので関係ないだろう」
「モーターが怪しい!」
どっかの教師は、それでもごねていたが、審査委員の指示で警備員に退場させられていった。
可哀想に、俺達の部に関わったばっかりに……。俺達の部と同じ空間にいるためには、常識に目を瞑る能力か、新奇な現象を取り敢えず受け入れる広い心が必要なんだよ。
審査委員達は多分後者だな。発明品の審査委員として、それで良いのかと俺は思うんだが? 詐欺り放題じゃないのか?
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