第31話 同居されてるんですか?
亮平と渚咲ちゃん、そう後ろから呼ばれ、振り返るとそこには買い物帰りのお母さんがいた。
お母さんの視線は下にあり、俺と渚咲が手を繋いでいることに気付き嬉しそうに笑っていた。
(絶対誤解されてる……)
すっと手を離し、誤解を解こうとしたが、渚咲が繋いだ手を離してはくれない。
隣をチラッと見ると彼女と目が合い、離したくないと言いたげな表情をした。
そんな表情をされたら離しにくい。けど、渚咲はこのままお母さんに誤解されていいのだろうか。後少しでも同じ家に住んでいるから誤解は解いた方がいいと思うのだが。
「ほんと仲良しさんね」
「裕子さん。人が多かったので手を繋いだらはぐれないと思いまして」
「なるほどね。知らない間に付き合い始めたのかと思っちゃったわ」
「ふふっ、まだ付き合ってませんよ。亮平くんとは仲のいい友達ですから」
渚咲の友達宣言を聞いてお母さんは何かに気付き、親指を立ててグッとした。
俺には何のサインかわからないが渚咲にはわかったらしく、ペコリと小さくお辞儀した。
「裕子さん、そちら持ちますよ」
するりと手が離れていき、渚咲はお母さんが手に持っている袋を手に取った。
「あらありがとう。亮平はこれお願いね?」
「あぁ……」
(誤解が溶けたのかわからないがまぁ……いいか)
***
プール当日。胡桃が彩音と真綾も誘い、最初は4人で行く予定だったが、6人となった。
現地集合だが、渚咲とはスタート地点が同じため一緒に家を出て駅で胡桃と海人と合流した。彩音と真綾とはプール施設に行くと先に来ていた。
「おはよ、藤原ちゃん」
「おはようございます、春風さん、茅森さん」
「おはようございます、藤原さん」
「真綾、また顔こわこわになってるよ~。藤原ちゃんのこと嫌いなの?」
彩音はそう尋ねながら真綾の頬をツンツンと人差し指でつつく。
「嫌いなんて……藤原さんとは仲良くしたいと思っています。藤原さんとはどこか似ているところがありますから」
真綾はそう言って微笑むと渚咲はどこが似ているのか考える素振りをみせる。
彩音もその似ているところに関しては思い付くところがなく首をかしげていた。
「雰囲気は似てるけど藤原ちゃんはピュアピュアでいい子ちゃんだと思うよ?」
「彩音さん、その言い方……私がいい子じゃなくて悪い子みたいじゃないですか」
「いやいや、真綾が悪い子なんて思ってないよ。まぁ、時には小悪魔って感じだけどね」
「彩音さん?」
「きゃ~こわい~」
彩音はさっと渚咲の背中に隠れて彼女にぎゅっと抱きつくとそれを見た胡桃がムスッと頬を膨らませた。
「藤原、人気者だな」
「渚ちゃんが取られる……」
「取られるって恋人じゃないんだから」
「私も渚ちゃんにぎゅーしたい!」
「いつもしてるじゃん」
「足りないの!」
「はぁ……ヤバい友達にならないようにな」
「ヤバくないし、友達ならぎゅーしたくなって当然なの!」
「へぇ……」
まぁ、こうして渚咲に仲良い友達ができて良かった。最初は頼れる人は誰もいないと言っていたけど、今は違う。
いつまでもここで話していると暑いし、遊ぶ時間も短くなるので入ろうと女子に声をかけて、俺たちはそれぞれ更衣室に入り、水着に着替えることになった。
俺と海人はすぐに着替え終わり、女子4人が来るまではちょっとした小さな流れるプールにいた。
「やっぱ夏はプールか海だよな」
「去年、海行ったな。海人は胡桃とどこか行く予定あるのか?」
「デートの予定を聞きたいと?」
「いや、別に具体的にどこに行くのか聞きたいわけじゃないけど」
恋人ならば遊園地とか水族館とか2人でいろんなところに行きそうだなと少しだけ……すこーしだけ気になった。
「胡桃のことお婆ちゃんに紹介したいから家族と一緒に帰省する予定はあるよ。亮平は藤原さんと何か予定はないのか?」
「藤原と? なんで藤原?」
「何でって、そりゃ……ねぇ……」
海人はニヤニヤしながらこちらを見てきた。俺と渚咲は本当に何もないのだが。
「藤原とは夏祭りには行くけど」
「おぉ~やるじゃん。亮平から誘ったのか?」
「ん……まぁ。夏祭りのポスターを見かけて一緒にどうかって……海人と胡桃は夏祭り行かないのか? 胡桃が行きたいって言いそうだけど」
胡桃と海人と去年は3人で夏祭りに行ったが、胡桃が1番楽しんでいた記憶がある。
「今年も行くよ。亮平も誘おうと思ってたんだが今年は別々に、お互い楽しもうぜ」
海人はそう言って手をグーにしてこちらにつきだしたので俺はコツンと拳をぶつけた。
すると、後ろから声がした。
「わっ、もう入ってる! 渚ちゃん、入ろっ!」
「はい、軽く準備体操してから入りましょうね」
後ろを振り返るとそこには渚咲と胡桃がいて、胡桃の水着姿を見た海人が隣で「おぉ」と感動していた。
「胡桃、似合ってる」
「ありがとっ海人。まぁ、渚ちゃんには負けちゃうけどねぇ」
そう言ってチラッと胡桃は彼女のことを見る。渚咲は上に上着を羽織っており、どんな水着を着ているのかはわからないが胡桃によれば超可愛いらしい。
俺と海人は一度プールサイドから上がると遅れてやってきた彩音と真綾がこちらに向かって歩いてきた。
全員来たところで皆何するかはバラバラで彩音と胡桃、海人はスライダーへ行ってしまった。俺と渚咲、真綾はというと浮き輪をレンタルし、流れるプールへ。
「ふふっ、冷たくて気持ちいいです。亮平くんは本当に浮き輪、借りなくて良かったんですか?」
水の中に入り、浮き輪に乗ろうとするが上手く乗れず落ちそうになっていた。
「抑えとくからゆっくり乗ったら?」
「ありがとうございます、亮平くん」
「渚咲も乗るなら……ってどうしたんだ? 怖い顔して」
渚咲も浮き輪に乗るかどうか聞こうとすると彼女は俺の顔を見てムスッとした顔をしていた。
「怒ってませんよ?」
「いや、でも……」
「怒ってません」
「…………そう」
怒ってないと言っているが絶対に怒っている。浮き輪に乗る話がよくなかったのだろうか。
「ふふっ、渚咲……ですか。亮平くん、藤原さんと付き合い始めたのですか?」
「!」
渚咲のことを気にしすぎてつい渚咲と呼んでしまったことに真綾の言葉で気が付いた。
2人でいるときだけ呼ぶと決めたが、いつかやってしまいそうなことを今やってしまった。
恐る恐る渚咲のことを見ると小さく笑っていた。
「付き合ってませんよ。亮平くんとはお友達のままです」
「…………そうですか。ところでお二人にお尋ねしたいことがあるのですが」
真綾は浮き輪に乗らず、進行方向に進みながら俺と渚咲のいる方に体を向けた。
「お二人は同居されてるんですか?」
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