前に進めないポーン

後勢市の冬は存外寒い。どの家も夏向きの建築構造をしているから冬にやや弱いのだ。そして今年は積雪を伴う大寒波が町を覆った。

「白い。」

トタン屋根の簡易な倉庫には氷柱が十数センチも伸び、道路の隅に目をやるとどこからか落下したのだろう蜂の巣に雪が積もっていた。

「ひやいね。」「ひやい。」「ひやい。」

軒先で老人達の話す声がかすかに聞こえる。

今日も昨日も夜は氷点下を下回り、昼間の室温は10度もなかった。こんな時であっても地方民の懐事情などはたかが知れている。僕は節約のためストーブも着けず布団を被り、寝床でだらだらと時間を潰した。食事時になると家にあった文旦を少し食べた。

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