月に焦がれ、
三郎
第1話:男女の友情は成立しない
男女の友情は成立しない。それを身を持って知ったのは、思春期に入り始めた頃。それまで友達だった男の子が、急に私を遠ざけるようになった。お前は女なんだから、女と遊べよと。仲間外れにされてショックを受ける私を、一人の女の子がグループに入れてくれた。
やがてそのグループに馴染んできた頃、彼女は私に聞いた。彼のこと好きなのかと。友達だと思ってると答えると、彼女は複雑そうに語った。自分は彼に恋をしていると。そうなんだと聞き流すと彼女は言った。だから彼と仲良くしないでほしいと。私は驚いたが、彼と彼女の友情を天秤にかけ、彼女を取った。先に私を仲間外れにしたのは彼の方だったから。
ある日、彼は私を呼び出して言った。あいつと仲良くするのはやめろよと。理由を聞くと、裏で私の悪口を言っていたのを聞いたと彼は語った。彼女を信じる私を彼は説得しようとしてくれた。だけど私は彼女を選んだ。彼の言うことが事実かどうかは問題ではなかった。彼は女だからと私を突き放した。彼女はそんな私を受け入れてくれた。だから私は彼女の味方をしたかった。友達になりたかった。だけど彼はそれを邪魔するように、やたらと私に構うようになった。私は彼を突き放したが、突き放せば突き放すほど彼は私に絡んできた。無視をすればわざと私が嫌がるようなことをして、気を引こうとした。嫌だと言っても聞かなかった。大人に相談しても、それは好意の裏返しだと微笑ましそうに言うだけで助けてはくれなかった。彼に恋をしているという女の子は、私を責めた。私の恋心を知ってるくせに酷いと。みんな彼女の味方をして、私についてくれる人はいなかった。
「だから言っただろ。あんなやつと友達になるなって」
「女なんだから女と遊べって、私を仲間外れにした人にそんなこと言われたくない」
「それは……」
「お願い……もう……私に構わないでよ……私はずっと君のこと友達だと思ってた。なのに……なんでこんな酷いことするの。君が私に構わなければ、あの子と友達になれたのに、なんで……なんで邪魔するのよ……! 最初に私を突き放したのはそっちのくせに! なんで……意味分かんないよ……」
彼の気持ちが理解出来ないと泣く私に彼は声を荒げながら言った。「俺はお前のこと好きなんだよ」と。その後、彼に何をされたかはよく覚えていない。ただ覚えているのは、あれだけ私の味方になってくれなかった大人達や女の子達が一斉に手のひらを返し、私を慰めようとしていたことだけ。辛かったね。怖かったね。ごめんね。抱きしめられかけられた優しい言葉は何一つ響かず、むしろ私の心を凍り付かせていった。どうしてもっと早く味方になってくれなかったの。そんな文句すら吐き出すのが面倒だと思うほどに、何もかもどうでも良くなった。どうせ吐き出したところで、文句を言う心の狭い私が悪者されるだけだから。そう学んだ私は、笑顔で取り繕うようになった。友人も、家族さえも信用せず。周りは簡単に騙された。唯一姉だけは本当に大丈夫かと心配してくれたが、そんな姉にさえ私は心を開かなかった。姉はあの時味方になってくれなかった内の一人だったから。それを後悔していることは伝わった。だけど信用することなんて出来なかった。
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