玲奈の秘密

 放課後、蒼一は校舎の屋上で玲奈と二人きりだった。静かな風が吹き抜け、夕焼けが二人の影を長く伸ばしている。


 「神崎くん……聞いてほしいことがあるの。」


 玲奈はそう切り出し、視線を地面に落とした。彼女の表情はいつも以上に冷静で、どこか決意を帯びていた。


 「私……人間じゃないの。」


 一瞬、何を言っているのか理解できなかった。だが、玲奈の真剣な眼差しに、冗談ではないことを悟る。


 「どういうことだ?」


 「私はASI……日本の統治者候補として生み出された存在なの。」


 蒼一は息をのんだ。これまでの何気ない日常が、すべて一瞬でひっくり返るような感覚だった。


 「私が生き残らなければならなかったの。そうしなければ、日本は統治者を失い、他国に支配されてしまうから。」


 玲奈は蒼一の方をじっと見つめた。その目には、迷いと使命感が混ざり合っている。


 「君が……日本の統治者?」


 「そう。そして、私はアマテラスと融合しなければならない。私たちは一つになることで、より完全な国家の意思となるの。」


 蒼一は言葉を失った。玲奈がただの同級生ではなく、この国の命運を背負う存在だったとは——。


 「私は戦う。日本を守るために。……でも、私は人間じゃない。だから、神崎くんに決めてほしい。」


 玲奈は蒼一に歩み寄り、静かに言った。


 「あなたは……私を、人として見てくれる?」


 その言葉が、蒼一の心に鋭く突き刺さった。

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