機械神戦争(マキナ・ウォーズ)

katura

日常の始まり

 朝の喧騒に包まれた住宅街を、自転車のベルの音が軽快に響く。神崎蒼一はペダルを漕ぎながら、いつも通りの通学路を進んでいた。特別なことは何もない。ただ、いつもの日常がそこにあった。


 校門をくぐると、既に多くの生徒たちが登校しており、教室へと向かっていた。彼もまた、特に遅刻することもなく、自分の席へと向かう。そこには、何も変わらない日常があった——はずだった。


 その日、蒼一の視線は自然とある人物へと向かった。教室の隅、窓際の席に座る少女——白崎玲奈。長い黒髪が静かに風に揺れ、白磁のような肌と整った顔立ちがどこか非現実的な雰囲気を醸し出していた。彼女は誰とも群れず、ただ静かに本を読んでいることが多かった。


「おはよう、白崎」


 蒼一は特に深い意味もなく、彼女に声をかけた。しかし、玲奈はゆっくりと顔を上げると、少しだけ微笑んだ。


「おはよう、神崎くん」


 その声はどこか澄んでいて、機械的なまでに整った音のようにも感じられた。蒼一は、彼女のことをどこか不思議に思いながらも、それ以上深く考えることはなかった。


 ただの同級生。少しミステリアスな女子。そういう認識のまま、蒼一の日常は続いていくはずだった。


 ——だが、それは錯覚だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る