第10話
大幅に精神力にダメージを受けながらもぱくりと口に入れたお弁当はおいしいことこの上ない。
凝り性な悟は冷凍食品とかは入れずに全部手作りだからね。今どきはお母さんたちも頼るのに悟ってばすごいとしか言えない。
近くにあった椅子に腰かけてさながらおこぼれを期待する子犬のような目でわたしを見つめる飯田くんに仕方ないので入っていたほうれん草とベーコンの入ったキッシュを恵んであげた。よろこんで食べる飯田くん。満足そうで何よりである。
「やっぱうまいな。嫁にしたい」
「飯田くんみたいな変態に悟はやらん。断固拒否する」
「まず遥の前に羽野本人に拒否されるわよ。それか羽野のファンクラブに抹殺されるわね」
「さもありなん」
「じゃあ嫁はいいからバイトに欲しい」
「まだ引きずるか」
どう頑張っても悟にバイトに来てほしいらしい。その熱心さには感心するがなぜ本人に言わないのか。飯田くん曰くわたしから頼む方が勝機がありそうだからとか言ってたけど別に変わらないだろうに。
欲しい欲しいとどこぞの麻薬中毒者かというレベルでしつこい飯田くんには紗衣からの熱い鉄拳が下された。なんて心強い。誰に対してもぶれないそんな紗衣が好きだ。日常的に泣きそうにもなるけど。
「あーあー、道宮だけ羽野の恩恵預かれるとかずるいわー、俺にも分けてほしいわー」
「幼馴染みの特権だよ。そう…幼馴染みの……」
幼馴染みというのを免罪符にして甘えてきたけどこれからはそれじゃあいけないんだよね。あ、またなんか自己嫌悪に陥りそう。というかすでに陥ってるわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます