第16話

「神宮寺殿はヤンデレの気質を持っているでござるか?」

「それにしては、平蔵君への執着があまり無い気がするけど」

「そうだな。寧ろ美涼はバレンタイン、というイベントに固執してると思うぞ」


二度目の騒動が終わり、無事に高校進学を済ませた俺たち残念トリオ。


神宮寺と顔を合わせることもなくなり、ホッとしていたのも束の間。何故か最近は、池田がやたらと俺たちに絡んでくるようになった。


「平蔵殿、浮かぬ顔をされてるようだが、如何なされた?」

「美涼の襲来はまだまだ先の話だぜ?今からそんなに気にしても仕方ないだろ」

「いや、そうじゃなくて……なんでイケメン太郎がここにいるんだ?」

「そりゃ受験に合格したからに決まってるだろ。バカかお前は」


ほほぅ……ウチの高校はスポーツに力を入れてはいるものの、偏差値はそこまで高くはない。つまり完璧超人と思われた池田も、オツムの出来は俺たちとそう大差はないということか。神様もやるときはやるじゃん。


「あ、ちなみに俺、特進クラスな」


そうかわかった。神は死んでいたようだ。アーメン。


「言い方を変えるか。なんでリア充のイケメン太郎様が、俺たち非モテ同盟と仲良く会話してるんだよ」

「平蔵君、そう邪険にするものじゃないよ?せっかく神宮寺さんの情報を持ってきてくれてるのに」

「そうでござるよ。池田殿も話してみれば、理解のある良きお方ではござらんか」

「やれやれ、俺は随分と鬼平おにへいに嫌われてるようだな」


なんだ鬼平って。犯科帳かよ。


「俺も歩み寄ってるつもりなんだがな。名前とは言わないが、せめて苗字で呼んでくれ。さもなきゃ『鬼畜の平蔵』で鬼平と呼ばせてもらうさ」

「平蔵君……」

「鬼平、言い得て妙でござるなw」

「わかったわかった、俺が悪かったよ池田。あと太一、草生やすな」


入学早々、リア充を敵に回しても得はない。格差社会の理不尽さについつい毒を吐いてしまったが、確かに池田はそんなに悪い奴じゃないし、ここは俺が素直に謝るべきだろう。

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