【完結】絶賛片想い中の幼馴染に恋を教えることになりました
月瀬ゆい
本編
1話 恋を教えて!
「ねえルカっ。見て、桜!満開だよ、きれいだね~」
「そうだね。最近あったかいし、春が来たって感じがする」
ひらひらと花びらを落とす桜を指さしてこどもみたいにはしゃぐのは、末永凛。私の小学校からの幼馴染だ。私はリンに、長年片思いをしている。現在進行形の初恋だ。まあ、本人はこれっぽっちも気づいていないみたいだけど。
「ルカ、知ってる?桜の花びらを地面に落ちる前にキャッチ出来たら、願いが叶うんだって!」
やってみようよ!と屈託のない笑顔を向けている相手が自分のことを好きだなんて、考えたこともないんだろうな。なにせ、今年から高校一年生になったってのに、恋人がすることはハグとデートとか言ってるし。ピュアすぎて心配になってくる。
「あ、とれた」
考え事をしながら適当に手を伸ばしていたら、偶然桜の花びらが手のひらに落ちた。
「ええっ、うそぉ。いいなぁ~。何お願いするの?」
「んー…」
…どんな形でもいいから、リンとずっと一緒にいられますように。
「なーんて」
あほらしい。ぽいっと花びらを放ると、くるくると舞ってから地面に落ちた。
「ルカ、何お願いしたの?」
「…ひみつ」
「ええ~!そんなぁ」
教えてよ、と抱き着いてくるリンをひっぺがして、リンの何も持っていない両手を見る。
「リン、とれなかったの?反射神経悪いもんね」
ふっと鼻で笑うと、リンはほおをふくらませた。
「ルカ、ひどい!たまたまだもん!運が悪かっただけ!」
眉をあげて怒ってるアピールをするリンの手に、そっと小さな柔らかい物をのせる。
「これ、花びら⁉くれるのっ?」
「うん。全然取れなくてカワイソウだからね」
にっと笑って見せると、リンは目を細めた。
「ひと言余計だよ…けど、ありがと!」
桜の花びらを大事そうにハンカチに包んでポケットにしまうリンに、何をお願いしたの?と聞いたら。
「んふふ、ひみつっ!」
と、はぐらかされてしまった。
(そりゃ、私も秘密って言ったし、文句は言えないけど…なんか釈然としないな)
「おととい、新しいマンガ買ったんだぁ。読む?」
「…読む」
はぁ、とため息をついてから、家まで競争ね!と走り出したリンの背中を追いかけた。
◇ ◇ ◇
家に着いてから、リンがおかしい。
マンガを読んでいる私の様子を、ちらちらと横目でうかがってくる。
気になりつつマンガを読み終えて、さかさまにした本を読んでいるリンに問いかけた。
「さっきからどうかした?なんか話でもあるの?」
「ふえっ⁉いやっ、あのっ、その…」
挙動不審なリンに首を傾げつつ、リンが話し出すのを待つ。
リンは本をいったん横に置いて深呼吸をしてから、口を開いた。
「あのね、あのね…ルカは好きな人、いるんでしょ?」
「ん?うん、まあ」
そのお相手は、目の前で人差し指同士をちょんちょんしているあなたなんですけどね。リンと気まずくなりたくないから、口が裂けても言わないけど。
「今日ね、ニナに、高校一年生にもなって恋愛経験ないのはおかしいって言われて…」
嫌な予感がする。
ニナというのは、他校の友達の白崎仁奈のことだ。勉強はできるけど、私とリンをくっつけたがっている姫女子である。ニナは私の想いに気づいているので、会うたびにからかわれている。
「それで、ルカに恋愛について教えてもらえば?ってアドバイスをもらったの!」
…あの野郎。あとで文句を言わなければ。
「だからね、その、ルカ、お願いっ!」
いや、ちょっと急展開すぎて脳がついていけないんですけど?
「わたしに、恋を教えて!…だめ、かな?」
まあ、内容はともあれ、好きな人に上目遣いでかわいくお願いされて、断れる人類なんかいないよね。少なくとも、私には無理。
「…いいよ。けど、やるからには本気でするからね」
それに、ちょっとでも意識してくれるかもだし。
無邪気にはしゃぐリンを横目に、私はこれからどうするか、考えを巡らせた。
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