2話 こじらせ過ぎだよね

 勢いと打算でついOKしちゃったけど、恋を教えるって、具体的にどうしたらいいんだろう。

 自室のベッドに寝転がりながら、私はうーんとうなった。

 そういえば、まだニナに文句言ってないな。元凶はニナなんだし、責任は取ってもらわないと。

 LIMEを開いて、『ニナ、リンに何を吹き込んだわけ?』と打ち込んで送信。

 数秒で既読がついて、すぐに返事が返ってきた。相変わらず異次元の反応速度だ。一生スマホ見てるのか?

『やだなぁ、ふたりがもだもだしてるから、ちょーっと後押ししてあげたんでしょ。文句を言われる筋合いはない!むしろ感謝してほしいくらいだよ』

『別に望んでないんだけど』

『まあまあ、そう言わずに!考えてみてよ、リンと友達って関係のままいちゃいちゃできるんだよ?ルカにとってはメリットしかなくない?』

 …なんかイライラしてきた。スマホをタップする指が早くなる。

『そういうことじゃないの。私は、リンとそういう関係になることは望んでない』

『それって本心なの?』

 間髪入れずに返ってきた一文に、指がピタリと止まった。

 …私は、リンと一緒にいられたら、それでいい。リンが幸せなら、それだけでいい。それ以上は望まない。だって私たちは幼馴染で、女の子同士で。リンは、そんなこと考えたこともないはずだ。

 でも、本当は……。

 そこまで考えたとき、握りしめていたスマホがピロンとなんとも間抜けな音を鳴らした。驚いて、肩がビクッと跳ねる。

『まあ、もうOKしちゃったんだし、今更なしなんて無理でしょ。覚悟決めたら?』

 私が何も返せないでいると、追加でメッセージが来た。

『とりあえず、ふたりはもうハグもデートもしてるでしょ?だから、キスから始めたら?』

 脳がフリーズした。

「はっ…はああああああっ!?」

 どうして…どうしてこんなことに…。

 私は奇声を上げながら、頭を抱えた。


◇ ◇ ◇


リンside


「はー、緊張したぁ。でも、まさか本当に引き受けてくれるだなんて…やっぱりルカはやさしいなぁ。あ、ニナにお礼言わなくちゃ!」

 わたし、末永凛は、幼馴染の板野瑠香に長年片想いしている。もちろん、本人にはないしょだけど。

 わたしは絶対、ルカの彼女になりたい。友達として一緒にいるんじゃなくて、彼女として一緒にいたいんだ。

 だってこの先、ルカに恋人ができたら。わたしはもう、ルカの『いちばん』じゃなくなる。そんなのは絶対に嫌だ。いつだって、わたしがルカの『いちばん』でいたい。

 これから先、どんなことがあっても、わたしの『いちばん』はルカしかいない。わたしの『いちばん』はルカにとられちゃったんだもん、ルカの『いちばん』をもらう権利だって、あるはずだよね?


◇ ◇ ◇


ニナ「ほーんと、ふたりともこじらせ過ぎだよね。リンはともかく、ルカも素直になっちゃえばいーのに。ま、見てて楽しいからいいんだけどね。そんなことより問題は、ルカリンかリンルカかってこと!どっちもいいなぁ。はー、妄想がはかどる〜っ!」

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