第19話

「未来を超える戦い方——俺は、新しい戦いのスタイルを手に入れた。」


オメガ・ダンジョンでの死闘。

ヴァルハラの黒幕、クロノスとの戦いは最終局面に突入する。


「さあ、決着をつけようぜ!!」


俺は剣を握りしめ、再びクロノスに向かう。


クロノスの体が黒い霧に包まれ、その輪郭が曖昧になっていく。


「……お前は、俺をここまで追い詰めた初めての人間だ。」


低い声が響く。


「だが、それだけでは俺を倒せない。」


『風間凌、クロノスが“時間操作”を発動する。』


「時間操作……?」


次の瞬間——


——ゴオォォォッ!!!


空間が一瞬歪んだ。


「っ!? 何が……!!?」


俺の体が急に動かなくなる。

まるで時間そのものが止まったかのように。


「これが、俺の“真の力”だ。」


クロノスの声が聞こえる。


「未来を見るのではない——俺は“時間を操作する”ことができる。」


「……っ!」


「お前の未来予知は“決められた未来”を見通す力だ。」


「だが、俺は未来を“創り変える”ことができる。」


クロノスが剣を振り上げ、俺の胸元へと突き下ろす。


「——終わりだ、風間凌。」


「チッ……!」


未来予知が機能しない。

時間すら操作される。


——なら、俺は何をすればいい?


『風間凌、未来を見ようとするな。お前自身が未来を決めろ。』


「……!!」


俺は瞬間的に理解した。


未来予知に頼らない戦い方——それは、“自分が未来を決める”ことだ。


「なら、俺が“時間操作を超える”動きをすればいいだけだ!!」


クロノスの剣が俺の胸元に届く瞬間——


俺は、自らの剣を自分の肩に突き刺した。


「——なっ!??」


クロノスが一瞬、驚愕する。


「お前の時間操作は、“敵の行動を制限する”ものだ。」


俺は歯を食いしばりながら笑う。


「だったら、俺が自分を傷つけることで、制限の枠組みをぶっ壊してやる!!」


「……!!」


血が流れ、俺の体が自由になる。


「これが、俺の“未来を超える”戦い方だ!!!」


俺は剣を引き抜き、そのままクロノスに向かって渾身の一撃を放つ!


「——おらぁぁぁぁっ!!!」


ズバァァァァッ!!!


クロノスの体が、ついに裂ける。


「……っ。」


クロノスは膝をつく。


「……お前は、本当に“未来を超えた”のか……。」


「言ったろ?」


俺は血まみれの剣を肩に担ぐ。


「未来なんて、俺が決めるんだよ。」


クロノスは微笑んだ。


「……なるほど。そういうことか。」


オメガ・ダンジョンが崩れ始める。


「この場所は、俺の力によって存在していた。」


クロノスが静かに言う。


「俺が敗れた今、ここは存在し続けることができない。」


「つまり、これは——」


「お前の勝利だ、風間凌。」


クロノスの体が、ゆっくりと霧のように消えていく。


「俺の役目は、ここで終わる。」


最後に、クロノスは俺を見つめ、こう言った。


「——だが、次はお前が“クロノス”になる。」


「……!」


「この世界の支配構造は、そう簡単に壊れない。」


「お前が勝者になった瞬間、次の戦いが始まるのだ。」


「……マジかよ。」


「お前は、これからどうする?」


俺は剣を握りしめ、ゆっくりと答えた。


「決まってるだろ。」


「俺は、俺自身の未来を作るだけだ。」


クロノスが静かに笑い、そのまま消滅した。


——オメガ・ダンジョン、崩壊。


クロノス、撃破。


風間凌、ランキング10位のその先へ——。




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