第5話

「くっそ……!」


俺は地面を蹴って横に転がる。


次の瞬間——


バンッ!!


俺がいた場所に銃弾が撃ち込まれる。

天童アキラ、日本同接ランキング1位の配信者。

この男が本気で俺を狩ろうとしている。


「おいおい、そんなに必死になんなよ?」


アキラは銃を片手に笑う。


「本当に未来が見えてるのか、試してやるよ。」


『風間凌、右に避けろ。』


未来予知コメントが流れた。


「……右だな!」


俺は直感を信じ、右へと跳ぶ!


バンッ!!


銃弾が俺の頬を掠め、壁を撃ち抜いた。


「はっ、やるじゃねぇか!」


マジでヤバい。

この男、普段はダンジョンでモンスターを狩る“ハンター系配信者”だが……

どう考えても人間相手に戦うことに慣れすぎてる。


こんな奴、まともにやり合って勝てるわけがない。


「へぇ、やっぱりお前が“未来予知の男”、ねぇ。」


アキラは銃を回しながら、不敵な笑みを浮かべる。


「面白いけどよ、その予知で本当に俺の動きを見切れるのか、試してやるよ。」


そう言って、彼はまるで適当に銃を撃った。


バン!バン!バン!


『伏せろ! 伏せろ! 伏せろ!』


未来予知コメントが連続で流れる。


「うおおおっ!?」


俺は咄嗟に地面に伏せる。


直後、銃弾が俺の頭上を通過し、壁に跳弾した。


「……危ねぇ!」


「ほぉ、ちゃんと回避できるんだな?」


アキラは俺の動きを見てニヤリと笑う。


「でもさ、お前、ずっと守りに徹してたら、どうなると思う?」


「……え?」


「未来予知があるからって、回避ばっかしてたら、いつか反撃できなくなるんじゃねぇの?」


その言葉に、俺はゾクッとした。


……そうだ。俺は“回避”しかしていない。


未来予知コメントの力はすごい。

でも、俺は未来を“見る”だけで、攻める手段を持っていない。


「お前がずっと回避するなら、俺はお前が反撃できなくなるまで攻め続けるだけだぜ?」


アキラはそう言って、再び銃を構えた。


『風間凌、30秒後に詰む』


「……ッ!」


未来予知コメントが、俺の敗北を宣言した——。


「30秒後に詰む、か……。」


俺は息を整えた。

考えろ。

どうすれば、この状況を覆せる?


未来予知コメントはあくまで“現時点での未来”を教えてくれるだけ。

なら……


「俺が、今この瞬間に行動を変えれば、未来も変わるんじゃねぇのか?」


「……ハッ、面白ぇこと言うじゃねぇか。」


アキラが笑う。


「じゃあ、試してみな? 本当に未来が変えられるかどうか!」


──やるしかない。


俺は拳を強く握りしめた。


「未来予知コメントの通りに動くんじゃなく、俺が未来を超えてやる……!」


アキラが再び銃を構える。


「じゃあ、次で決めるぜ?」


俺はその瞬間、あることを試した。


──未来予知コメントは、俺の未来だけを教えてくれる。

──なら、相手の未来を誘導すればいいんじゃねぇか?


「……!」


アキラの動きに合わせて、俺は思い切ってフェイントを入れた!


未来予知コメントは「30秒後に詰む」と言っていた。

でも、それはの話。


なら、俺が普通の動きをしなければ、未来は変わるはず……!


アキラが銃を撃つ瞬間、俺はわざと転ぶフリをした。


「くっそ、転んだ……!」


そう見せかけて、俺は地面の砂を掴んだ。


「──もらった!」


そして、俺は砂をアキラの顔めがけて投げた!!


「うおっ、マジか!?」


アキラが目を細める。その隙に——


「くらえっ!!」


俺は全力でアキラの腹に蹴りを入れた!!


ドガッ!


「っつ……!」


アキラはバランスを崩し、銃を落とす。


その瞬間——


『未来が変わった。風間凌、勝利確定』


「……!」


──やった。


俺は、未来を変えたんだ!!


アキラは苦笑しながら立ち上がった。


「……ハッ、マジで未来を変えやがったな。」


俺は息を切らしながらも、拳を握る。


「……これが、俺の戦い方だよ。」


「面白ぇな、お前。」


アキラは銃を拾い、ホルスターにしまう。


「お前、いつかマジでトップ配信者になるかもな。」


そう言って、アキラはニヤリと笑った。


視聴者数 1,204人


「……は?」


『神降臨』

『風間最強!風間最強!風間最強!風間最強!』

『日本のトップ、弱すぎじゃない?』

『まじか!?』

『カインの配信おもろいから見てほしい』


画面を見ると、俺の配信の視聴者が一気に1,000人を超えていた。


「嘘だろ……。」


未来予知 VS 日本ランキング1位の戦いは、ネット上で一気に拡散されていたのだった——!



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