第2話

「はぁ、はぁ……マジでヤバかった……。」


俺はダンジョンの壁にもたれかかり、荒い息をついた。

ついさっきまで死の危機にいたのだから、当然だ。


だが、それ以上に気になるのは──


「このコメント……本当に未来を知ってるのか?」


画面に残る奇妙なコメントたち。

全てが的中し、俺の命を救った。


『次の部屋でボスが奇襲してくるぞ!』 → 的中

『左に回避しろ! 右は罠だ!』 → 的中

『5秒後に宝箱の罠が発動するぞ』 → 的中


「まぐれじゃない。確実に、未来を知ってる……。」


だが、ここで最大の疑問が生まれる。


──誰がコメントしてる?


俺の配信の視聴者数はゼロ。

誰も見ていないのに、コメントが流れるはずがない。


「まさか……バグ?」


俺は配信設定を確認するが、特に異常はない。

配信ソフトの不具合かもしれないが、未来を言い当てるバグなんて聞いたことがない。


「……まぁいい。今は、この能力を使いこなせるか試してみるか。」


仮にこのコメントが未来を予知できるのなら、俺にとっては最高の武器になる。

視聴者ゼロの底辺配信者が、未来を知ることでトップに成り上がる!

これが本当にできるなら──俺の人生、変わるかもしれない。


「よし、コメントの言う通りに動いてみよう。」


俺は意を決して次の部屋へ進む。

いつもなら慎重に進むところだが、今回はあえてコメントの指示に従って行動する。


すると——


『部屋の中央に魔法陣がある。そこに乗ると敵が召喚される』


「……確認してみるか。」


部屋に入ると、本当に中央に魔法陣のような紋章が刻まれていた。

俺は慎重に足を踏み入れず、遠くから観察する。


数秒後——


「──ガルルル……!」


魔法陣が発光し、中から巨大なゴーレムが出現!


「マジかよ……。」


もしコメントがなかったら、俺は無防備のまま魔法陣に乗って即死してたかもしれない。


「やっぱり、このコメント……ガチだ。」


確信した。

これは単なる偶然じゃない。


未来が見えている。


「よし、このままコメントを活用して戦ってみるか。」


『ゴーレムの弱点は背中。魔法核を破壊すれば即死する』


「……試してみるか。」


俺はゴーレムの正面からわざと攻撃を仕掛け、あえて回避。

ゴーレムが振り向いた瞬間、背中に飛び乗る!


「くらえええっ!」


安物の剣を魔法核に叩き込むと、ゴーレムは一瞬で崩れ落ちた。


「す、すげえ……!」


今までまともにモンスターを倒せなかった俺が、コメントの指示だけで強敵を瞬殺した。

もしこのまま配信を続ければ……本当にトップ配信者になれるかもしれない。


「……でも、おかしいよな。」


視聴者ゼロのはずなのに、なぜ俺にだけコメントが見える?


この能力は、ただの未来予知なんかじゃない。

もっと何か、恐ろしい真実が隠されている気がした。


「でも、今は気にしない! これを使って成り上がるだけだ!」


俺はそう決意し、配信を続行することにした。


だが、この選択が、世界の運命を狂わせることになるとは、この時まだ知らなかった——。



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