第20話 感動
自作したかぼちゃの煮物が美味しくて、涙が出そうになった。なんでかぼちゃは、こんなにも私を優しく包み込んでくれるのだろう、私はかぼちゃに何もしてあげていないのに、などとおかしなことを考えてしまった。優しい甘さがあって、水っぽくなくてほくほくしているし、しかも化学調味料を入れずに醤油や酒などで調理してあるから体にも良いという良いことずくめなこのかぼちゃの煮物に好感しかない。小さめに切ったから、狙い通りすぐに火が入ったし、味が染み込んでいる。しかも、レンジをしてからカットしたので無理なく包丁で切ることができた。さらに、かぼちゃ四分の一カットをすべて一度に調理したのであと三回は食べられるくらいの量ができた。多すぎず、少なすぎず飽きずに何度か食べられるほど良い量だ。
自作した手羽元と玉ねぎの煮物が美味しかった。スーパーで安かったし、鶏むね肉と豚こま切ればかりの日常に変化をつけたくて買った手羽元と、冷蔵庫にあった玉ねぎを塩とショウガと酒で煮た。大きめに切った玉ねぎがとろとろになって、手羽元が食べやすくなっていた。しかも醤油ではなく塩で煮たので黒くなりすぎていなくて見た目も美しく、さっぱりとしていて美味しい。さらに、手羽元からだしが出て、玉ねぎの甘みも加わり美味しいスープになっていたので、残りの煮汁にレタスをちぎって入れてスープとして飲んだ。最後の最後まで無駄なく味わうことができ、満足感があった。
食べることに対して苦手意識が高まっているのに、このような感動を得ると、また食べることを嫌いになり切れず、またそれはそれで生殺しのようでつらい。食べることで癒されることもあれば食べることで苦しむこともある。一生、食と向き合っていかなければならないことには不安しかないが、食事で得られる些細な感動を忘れずにいたい。
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