第2話 暇だったんで...

街コンのサイトには複数の会場があったが、家のすぐ近くのところを選んだ。


なんで参加したんですかって聞かれた時に、いかにも昨日偶然イベント見つけて〜、暇だったので、参加してみようかな〜って思って的な雰囲気を出したいからだ。


集合場所は駅の改札前だった。すでに7,8人の人が集まっていて、なんだか話しかけにくい。


タイミングを見て、近づく。


「あ、あの今日〇〇のイベントで来たんですが...」


主催者とおぼしき女性はスマホの画面を見せながら、こう言う。


「この生田さんですか?」


「そうです。よろしくお願いします。」


「小森です。よろしくお願いします。」


と言って彼女が軽く会釈をするので、僕も作り笑いを浮かべながら、会釈を返す。


すると、彼女は


「全員揃いましたね!時間前にみんな揃うなんて優秀!」と言うと、


「本日はお集まりいただきありがとうございます。今日はこのメンバーで商店街の街歩きをしながら、楽しもうと思います。」


「みなさん、〇〇のイベントには参加されたことがありますか?」


と投げかけると、僕を除いた全員が手を挙げる。


いたたまれない気分になっていると、


「初参加の生田さんも楽しみましうー。」とギャルっぽい女性が話しかけてくる。


僕は上手い返しが思いつかず、「た、楽しみましょう。」と返す。


社会人になって、こういう遠足みたいなことも珍しい。小森さんが


「じゃあ、あちらの商店街を散策しましょう〜。レッツゴー。」


と宣言すると、全員で商店街の入り口に向かっていく。


根っからのぼっち気質だからだろうか、集団になると自然と僕だけが取り残されてしまう。


横で男性2人組が


「俺、静岡出身で〜。」


「静岡といえば、お茶ですよね〜。」


と喋りながら歩いている。


僕はどうしたらいいのかわからず、一人だけ集団のなかで浮いてしまう。


横断歩道を渡ったところで女神が舞い降りた。主催者の女性2人のうち小森さんではない方だ。


「今日、初参加の伊藤さんですよね?主催の横谷です。」


「は、はいそうです。」


その瞬間、この人に見捨てられたら終わりだと思い、言葉を必死に紡ぐ。


「えっと、たまたま見つけて暇だったんで。」


「へ〜、この辺に住んでるの?」


「そうなんです。ここの近くに住んでいて、よくこの辺も通りがかるんです。」


もう舌が回らなくなってくる。普段の自分は一日でこれくらいしか話さない。


すると、一行は商店街の入口にある大福屋の前で立ち止まる。


横谷さんは


「生田さん、大福買う?」

と尋ねてくれたので、


「折角なんで、買います。何回か買ったことあるんですけど、美味しいですよ。いっつも並んでます。」


「へ〜、そうなんだ。じゃあ、私も買っちゃおっと。」


列に並んでいる途中、横谷さんが


「下の名前はなんだっけ?」と聞いてきたので、


「星矢です。聖闘士星矢の。」

と返すと、


「はは、そうなんだ。面白いね〜。私は奈々恵。ななって呼んでね。」

と微笑む。


些細な会話が、少し頬を緩めた気がした。

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