恋の最適解を求める。

透影堂

第1話 ある雪の日

その日は喋るのが面倒だった。


とにかく面倒だった。


でも、社会人になっても一人で休日も本を読んで、勉強する。そんな大学院生と同じような生活をし続けるのは、本当にいいのだろうか?


その気持ちだけが、僕を街コンのイベントに踏み出させたのだ。


遡ること3日。水曜日のことだ。


朝、最寄駅まで歩く。いつもと変わらない景色。


その日は雪が降っていた。早めに家を出た僕は、上司からのSlackを確認しようとスマホを開く。


すると、いつもは公式LINEしか動かないLINEのメッセージが動いている。大松だ。


大松は僕の大学院時代の唯一の友達と言ってもいい同級生だった。僕たちは数学科の大学院生で、一緒のサークルに入っていたわけでもなかったが、同じ院生室で近い席にいたからかすぐに仲良くなった。


メッセージには、


「俺、今度結婚することになったわ。結婚式招待するから来いよ。」


と書かれている。


一瞬、時が止まったような感覚になる。思わず改札前で立ち止まる。


サラリーマンとぶつかりそうになり、聞こえるか聞こえないかくらいの声ですいませんとつぶやいた。


大学院を卒業して、2年。あいつにそんな相手いたか冷やかしなんじゃないかという気持ちといやそういうことをするタイプではないよなという気持ちが入り混じる。


大松のメッセージには既読をつけたくない。気持ちの整理をつけるまで、未読にしておこう。そう心の中で呟きながら、上司に今日中に案件の資料を仕上げますとメッセージと同時に今日も通勤電車に乗り込んだ。


翻って、今日は週末の土曜日。


大通りには家族連れ、カップル、老人の会などたくさんの人が入り乱れている。


いつからか僕はそうしたものを目に入れないようにしていたかもしれない。


一人でも生きていける。孤独かもしれないが、それでいい。むしろ、その方が楽だ。昔から人と関われば関わるほど孤独を感じたものだ。週末だって、一人で映画や本を読んでいる方がよっぽど面白いしタメになるじゃないか。


でも、それでいいのかなって一抹の不安もあったんだと思う。そうした思いを抱えながら、イベント会場に向かう。


この日、僕の人生が少しだけ色づき始めた。

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