君の心に響く詩を
綺羅羽
プロローグ
第1話
僕は、「感情」がわからない。
幼いころは「楽しい」や「悲しい」という感情はあった。
でもいつしかその感情たちは薄れゆき、何も感じることができなくなってしまった。
自分の中の感情が喪失してしまった。
みんなが笑っていれば笑顔を作る。
感動したというなら話を合わせる。
みんなが盛り上がっているなら同じように振る舞う。
周りに合わせること。それが僕の処世術。
僕は容姿が整っているらしい。多くの女の子から告白されたことがある。
町中を歩いているとヒソヒソと「あの人イケメンじゃない?」といわれる。
だが、僕からしたら顔の差異がわからない。
「好き」という感情も、わからない。
付き合ったことはある。だが、距離をおいた態度は女の子を悲しませるらしい。
だから、すぐに離れていってしまう。
泣かせるのはよくないと知っているから、付き合うことをしないようにした。
僕は記憶力がいい。
学内でのテストでいつも1位を取っている。
同級生から褒められることがある。
でも『うれしい』と思うことができない。
勉強も、やることが無いからやっているだけ。
僕は目立つ存在なんだと思う。
それはいやおうがなく自認している。
でも、そんなものは僕にとって何の意味も持たない。
ただ、僕は今に満足している。
「感情がない」ということは、傷つくことがないし、感情に左右されることもない。
人間は感情に動かされて後悔すること、過ちを犯すことが少なくない。
それがないということは、大きなメリットだと思っている。
だから、月曜日の朝も憂鬱じゃない。いつものように起きてご飯を食べ、歩いて高校に行くという、いつもと変わらない朝。
でも、今日の朝はいつもとは違っていた。
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